2012年10月1日付けで、新会社「NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション」(NTTコム オンライン)がスタートした。同社は、ビッグデータを活用したオンラインマーケティングソリューション事業を展開する会社で、データベースマーケティング事業を行ってきたNTTナビスペースを母体に、NTTコミュニケーションズのオンラインマーケティングソリューション事業、NTTレゾナントのオンラインリサーチ事業(gooリサーチ)、さらにWebアクセス解析事業を行うデジタルフォレストの全事業を承継する。
「オンラインマーケティングソリューション事業を一気通貫で提供する会社はほかにはない」と、NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューションの塚本良江社長は語る。 そして、「日本の会社だからこそ、日本の企業をもっと元気にしていきたい」とも語る。新会社の果たす役割とは何なのか。同社の取り組みについて、塚本社長に話を聞いた。
-- NTT-Xでgooの立ち上げにカンパニー長として陣頭指揮を執り、さらに日本マイクロソフトではMSN事業部長として手腕を発揮するなど、この業界で長年の経験を持つ塚本社長から見て、いまの市場環境をどう捉えていますか?
塚本 私はインターネット登場時以来の大きな変革期を迎えていると考えています。その原動力となっているのは、スマートフォンとソーシャルです。スマートフォンは、すでに携帯電話の全出荷台数の半分以上を占め、これからもますます増加する傾向にあります。スマートフォンの最大の魅力は、これまで情報を得ようとすれば、どこか一カ所に留まる必要があったものが、いつでも、どこでも情報が収集できるようになっている点です。それが情報取得のスピードを格段に向上させています。
一方で、ソーシャルメディアも急速な勢いで利用者数が増加しており、多くの人が日々発信を行っています。これまでの企業と消費者との対話は、どうしても一方向になりがちだったり、双方向性を求めるとコールセンターのように、1対1という閉ざされたものになりがちでした。しかし、ソーシャルメディアでは、双方向性、リアルタイム性、拡散性といったすべての要素を持つようになりました。つまり、スマートフォンとソーシャルの組み合わせが、距離と時間を変え、拡散性、リアルタイム性、双方向性といった環境を両立することになったのです。
こうなると世の中の仕組みは大きく変化します。これまでの企業と個人の「コミュニケーション」という言葉の意味は、主に情報伝達を意味するものであったのに対して、スマートフォンとソーシャルの時代には、関心や興味を共有し、そこから新たな製品やサービスを共創するといった仕組みを指すようになってきます。これは、まさに大きな変化だといえます。
-- そうした時代において、NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューションを設立した狙いとは何ですか?
塚本 2つの観点からお話しすることができます。ひとつは、NTT Comグループの観点からの話です。
NTT Comグループでは、通信収入以外の事業を急速な勢いで増やしていくという方針を掲げており、そのなかでインターネット関連ビジネスを推進していくのが当社であるという点です。これまでにもグループ会社のなかには、それぞれ個別でインターネット関連事業を展開してきた経緯はありますが、これらを統合し、ノウハウや知見を活用すれば、いまの時代が求めるソリューションを提案できる。そうした点で新会社を設立しました。
親会社であるNTTコミュニケーションズは、ネットワークやシステム構築などのビジネスが中心となりますから、対象となるのは情報シテスム部門やCIOとなります。しかし、オンライン・マーケティングの領域では、営業、マーケティング、サービスといった現場部門がビジネスの対象となります。その点でも、対象が異なるため、子会社として事業を切り出したといういい方もできます。
もうひとつは、先ほど触れたように、スマートフォンとソーシャルの広がりによって、企業と消費者とのコミュニケーションの関係が変わってきているという市場の変化です。そうしたなかで、企業のマーケティング活動を支援するオンラインマーケティングソリューション事業をさらに強化し、ビッグデータ時代における市場の変化や企業のグローバル展開に対応していくという狙いがあります。当社では、「マルチチャネル顧客接点の構築」、「ソーシャルCRM」、「ビッグデータ解析」という3点を、事業の柱に据えています。WebやEC、O2O(Online to Offline)、ソーシャルメディアなど、オンラインとオフラインをまたがるトータルな顧客接点を構築し、ソーシャルメディアなどを活用した情報発信や、顧客との新たな絆づくりを実現するための仕組みを導入および運営するための支援、効果分析を最適な技術を通じて提供。さらに膨大な顧客の声やアクセスログをリアルタイムで解析し、ビジネスに活用するための支援を行っていくことになります。
-- NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューションの強みはどこにありますか?
塚本 ひとつは、それぞれの領域では競合する企業はありますが、これらを一気通貫で提供できる企業は当社しかないという点です。膨大なデータから消費者が何を考えているのか、何を感じているのかということを知り、それを知った上で、さまざまな顧客接点を通じて情報を発信。さらにソーシャルCRMを通じて、その情報を受け取った消費者とコミュニケーションを行う。それがビッグデータとなり、さらに消費者の声を知ることができる、というように、3つの事業の柱を、サイクルとして回すことができます。ビッグデータから新しい絆を生むことを、トータルで支援できるのが強みだといえます。
また、ビッグデータ解析の領域では、Twitter社との戦略的提携によって、日本語でツイートされる情報の全量を取得することができる点が当社にしかない大きな特徴です。現在、一日5~6億件のつぶやきが全世界で飛び交っており、そのうち、日本語でのつぶやきが全体の2割を占めています。さらに、そのうちの35%が企業のサービスに関わるものだといわれています。こうした膨大な情報を、NTTの研究所が開発した高精度エンジンによって、リアルタイムでの解析が可能になります。これも当社ならではの強みです。この技術は、ソーシャルBuzz(ソーシャルメディアにおけるクチコミ情報)の解析において、他社との大きな差別化になります。さらに、ソーシャルCRMの領域では、テレマーケティングにおいてグループ会社を支援してきたノウハウなども活用することができます。これらの点が、NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューションの強みだといえます。