「有用性が認識されていながら全社的な企業導入事例があまり出てこない理由として、日本的な体質もあるという。

「海外の企業の場合はまず使ってみよう、使ってみなければわからないという考え方ですが、日本の場合は事前にリスクを全て把握した上で使いたいという傾向があります。しかし、スマートデバイスという新しいものをどういう風に使うと有効なのかは、実際に使ってみなければわかりません。また、大規模な導入となると管理端末数が膨大になるためセキュリティや管理、サポート等が大きな負担だと考えている企業も多いようです」と針生氏。

BYODが話題になりながらも、実導入事例が少ない理由も同じだという。

「海外では、PCにおいても個人デバイスを業務にも利用する例も見られていました。しかし日本では、業務には会社支給のものを使うのが当たり前という感覚で来たので、スマートデバイスに限って、BYODを採用するとなると戸惑ってしまうのです。また、通信料金の分計サービス(会社分と個人分を分けて請求すること)はあっても、それを利用すると会計処理が大変だともいいます」と針生氏。

ただ、スマートデバイスのライフサイクルはPCに比べて短く、これに企業が対応し続けるのは難しい。いずれ、BYODが徐々に受け入れられて行くようになるだろうと針生氏は指摘する。

「IT部門としては、セキュリティに対する懸念や管理が大変になるからあまり積極的にはやりたくないという意見もあります。経営層はさまざまですが、コストカットのためにBYODを採用するという考えは異なっていると思います。コストは移るだけで減りはしません。BYODを何のために採用するのかと考えた場合、個人の働きやすさやモチベーションの向上、ビジネスへの貢献といったものを目的にすべきだと思います。使い慣れた端末を使えることの快適さや、好きな端末を使えることでのモチベーション向上は理由の一つです」と、針生氏は考え方の転換を提案した。