夏と言えば海、山のレジャーも良いですが、今年はちょっと遠出して地方のアートスポットに足を運んでみませんか? 郷土の里山を舞台にしたアートイベントや、ランドスケープに溶け込むように作られた美術館など、アートを楽しみながら自然に包まれリフレッシュできるお勧めのスポットをご紹介します。

大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2012

新潟県十日町市、津南町の里山を舞台に3年に一度開催されているアートイベント。5回目を迎える今回は2012年7月29日~9月17日の会期で開催中。

東京23区分に匹敵する面積に国内外のアーティストによる約300のアート作品が展開され、来場者は集落を移動しながら作品を鑑賞する。
マップを頼りに作品を探し歩く道中では、稲穂の垂れる水田の美しさや、古くからの村の趣を残した集落など、あちこちで足を止めたくなる風景に出会える。 古民家を丸ごとアートとして再生した作品や、廃校を利用したインスタレーションなどダイナミックな作品も多い。 地元住民との触れ合いや、作品を見つけるごとにスタンプラリーの台紙が埋まっていく達成感も楽しみのひとつ。

豊島美術館

瀬戸内海に浮かぶ豊島(てしま)に2010年、ベネッセアートサイト直島の一環として開館した美術館。瀬戸内といえば直島の「ベネッセハウスミュージアム」や「地中美術館」が思い浮かぶが、直島から船で20分の豊島にも是非足を伸ばしたい。 アーティスト・内藤礼の『母型』という1点のインスタレーション作品を収めるためだけに作られた同美術館は、建築家・西沢立衛の設計によるもの。作品のテーマでもある「水滴」をイメージした有機的なフォルムの建物は、海を望む高台に地中に埋まるようにしてデザインされ、作品・自然・建物が呼応し合い、ひとつの空間を作り出している。周囲には棚田が広がり、地中海を思わせる日差しの元、稲穂を揺らす風と波の音に日常の喧噪を忘れることができるだろう。

また、島内にはクリスチャン・ボルタンスキーのインスタレーション『心臓音のアーカイブ』の展示室も公開されており、こちらも林の中を抜けた静かな浜辺にあり、ロケーションが素晴らしい。

原ミュージアムアーク

東京都品川区にある「原美術館」の別館として、群馬県渋川市に1988年に開館した現代アートの美術館。 眩しい緑の芝で包まれた敷地内に、磯崎新設計によるシャープな木造建築が映える。 原美術館の所蔵する現代アートの企画展示に加え、2008年に増設された別館「觀海(かんかい)庵」では日本・東洋の古美術のコレクションも公開している。 オラファー・エリアソンによる屋外展示『Sunspace for Shibukawa』も見所のひとつ。芝生に佇む銀色の小さなドームの中にはプリズムレンズを通して光が射し込み、太陽の位置や天候によって刻一刻と変化する現象そのものが作品のテーマとなっている。

美術館は伊香保グリーン牧場と隣接しており、お得なセットチケットを利用して1日楽しめる。自然とアートを満喫した後は、草津と並ぶ群馬の名湯、伊香保温泉で汗を流して。

安曇野ちひろ美術館

のどかな田園風景の広がる長野県の安曇野エリアにある美術館。いわさきちひろの作品と世界の絵本をテーマとした展示を行っている。周囲に広がる36500㎡の「安曇野ちひろ公園」では、四季折々の花を楽しんだり、園内を流れる清流で涼んだりと、大人から子供まで思い思いのひとときを過ごすことができる。絵本を読みながらほっと一息つけるカフェも癒しの空間。

近年アートエリアとして注目を集める安曇野には、碌山美術館や安曇野アートヒルズミュージアムをはじめ、小さなギャラリーや工房などの見所が点在する。しかも、その多くがレンタサイクルで回ることができる距離感にあるのも魅力だ。水田に囲まれた一本道や、せせらぎを感じる渓流沿いの道を走りながら、自転車でマイペースに見て回るのがお勧め。

養老天命反転地

岐阜県養老町の養老公園内にある、美術館ともテーマパークともカテゴライズしがたい不思議な施設。エリア一帯が、ニューヨークで活動する現代美術家・荒川修作と、パートナーであり詩人のマドリン・ギンズのプロジェクトを実現した体験型アート作品になっている。

メインパビリオン『極限で似るものの家』と、すり鉢状の敷地が広がる『楕円形のフィールド』で構成されており、急な斜面や細い路地を通りながらフィールドアスレチックのような感覚で鑑賞して回る。平坦な足場はほとんどなく、スニーカーやゴム底の靴での来場が推奨されており、受付でヘルメットの貸し出しも行なっている。傾いた建造物の中には不可思議な位置に家具が配置され、迷路のように張り巡らされた回廊や、平衡感覚や遠近感を惑わせるオブジェが並ぶ。非日常の世界にトリップした後は、敷地内の丘に登ってみよう。濃尾平野の景色を一望できる。施設からほど近くにある養老の滝にも合わせて立ち寄りたい。

おわりに

土地の景観もアートの一部として取り入れた美術館や、地域発信型のアートイベントには、そこでしか出会えない一期一会の体験が待っているもの。夏休みや週末を利用して、アート×自然の旅に出てみてはいかがでしょうか(各施設の開館スケジュール、イベントの開催概要等は各ホームページにてご確認下さい)。

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