ルネサス エレクトロニクスは7月11日、太陽光発電や産業用モータなどの省電力化に寄与するパワー半導体の第7世代IGBTシリーズとして、650V対応の「RJH/RJP65S」シリーズと1250V対応の「RJP1CS」シリーズなど13品種を発表した。

近年、環境保全などのために省エネ化や、太陽光、風力発電などのクリーンエネルギーへの転換が進められている。特に、太陽光発電や水流ポンプ、大電流インバータ制御モータなどの高電圧・大電流機器における省電力化が強く推進されており、電力を直流から交流に変換する際に使用されるIGBTにも大幅な低損失化が要求されている。しかし、低損失化の鍵となる飽和電圧は、大電流機器で要求される高い負荷短絡耐量とはトレードオフの関係にあるため、太陽光発電のパワーコンディショナなどで要求される負荷短絡耐量10μsというレベルでの、さらなる低損失化は困難だった。

そこで、このような課題に対応するため、今回のパワー半導体の第7世代IGBTシリーズでは、新たな技術を3つ採用した。まず、極薄ウエーハ構造を採用し、650V品の飽和電圧を従来の1.8V(標準値)から1.6V(標準値)に、1250V品では2.1Vから1.8Vに、それぞれ約12%および約15%低減した。これにより、導通損失を低減できることから、機器の省電力化が図れるという。また、大電流用途で必要とされる高負荷短絡耐量を表面セル構造の最適化技術により、従来品の8μsから10μs以上まで向上させた。これにより、大電流インバータなどで必要とされる耐量を確保した。さらに、表面構造の最適化により帰還容量(Cres)を従来品から約10%低減して高速スイッチング化を図り、電力変換回路の高効率化を実現した。

同製品群により、特に太陽光発電パワーコンディショナの大電流インバータ部や、産業用途などのインバータ制御モータに多用される3相インバータ回路などの低損失化と安定動作の両立に寄与できるという。

なお、ラインナップには業界標準であるTO-247Aパッケージを採用した「RJH65S」シリーズとユーザの基板への直接実装や、周辺部品とのモジュール化などに対応するため、ウェハ/チップ出荷形態を標準仕様とした「RJP65S」シリーズおよび「RJP1CS」シリーズを揃えている。

サンプル価格は、コレクタ電流や出荷形態などにより異なるが、定格コレクタ電流が表面温度 (Tc)100℃時100A(25℃時200A)でウェハ出荷の650Vの「RJP65S06DWA」はチップ1個350円、1250Vの「RJP1CS06DWA」はチップ1個が400円となっている。すでにサンプル出荷を開始している。

「第7世代IGBTシリーズ(左:パッケージ、右:チップ)」