カゴメの運営するカゴメ総合研究所は7月2日、鈴鹿医療科学大学薬学部の佐藤英介教授との共同研究により、動物試験において運動前、または中間でのトマトジュースの摂取が、運動後の疲労の度合いの指標(疲労バイオマーカー)の増加を抑制することを明らかにしたと発表した。研究の詳細な内容は、3月22~26日に京都女子大学で開催された「2012年度日本農芸化学会」にて発表された。

健康長寿のためには、適切な食生活と適度な運動が重要だ。しかし、過剰な運動は酸化ストレスや疲労による障害を招いてしまう。トマトには抗酸化物質である「リコピン」を筆頭に各種ビタミン、ミネラル、有機酸など多くの栄養成分が含まれており、酸化ストレスや疲労による障害の軽減が期待できる食べ物である。

同社は、これまでにヒトにおいて、中程度の運動時にトマトジュースを摂取することで、運動中の乳酸の代謝が改善され、疲労感の軽減が期待できることを示してきた。

各種疲労においては、生体内での炎症や疲労の伝達に関与する物質である「サイトカイン」やホルモンの増加との関連が知られている。これらの物質は、肉体的な疲労のほか、眼に強制的に光を当てるなどの精神的な疲労においても顕著に増加することが知られており、「疲労バイオマーカー」とされている物質だ。

今回の研究では、トマトジュースの摂取が運動疲労に与える影響をより詳細に検討するため、マウスを用いた試験により、トマトジュース及びその上清の摂取が疲労バイオマーカーに与える影響と効果的な摂取タイミングについての検討が行われた。

運動前、運動中間、運動後のいずれかのタイミングでマウスにトマトジュース、またはその上清を摂取させ、運動後の疲労バイオマーカーの濃度が測定された形である。

マウスを、水を経口投与した「コントロール群」、トマトジュースを経口投与した「トマトジュース群」、トマトジュースを遠心分離して得られた上清を経口投与した「トマトジュース上清群」の3群に分けて実験は行われた。

ベルトコンベア状の走行装置(トレッドミル)で合計1時間の走行運動をさせた後、運動6時間後の血中のサイトカイン、ホルモンが測定されたのである。試験飲料のタイミングは、運動前、運動中間、運動後のいずれかのタイミングで投与された(画像1)。

疲労バイオマーカーの1つであるサイトカイン「TGF-b」の測定結果が画像2だ。運動負荷後に、血中TGF-b濃度は顕著に増加するが、トマトジュース、トマトジュース上清の運動前、または運動中間での投与により、その増加が抑制されているのがわかる。

画像1。試験スケジュール

画像2。トマトジュース及びその上清の運動前(左)、運動中間(中央)、運動後(右)の投与が運動後の血中TGF-β濃度に与える影響(Means±SD,n=5 mice,*p<0.05)

運動後の投与では、運動負荷後の血中TGF-b濃度はコントロール群と差がなかった。この結果より、トマトジュースの運動前、または中間での投与により運動後の疲労が軽減されること、また、この作用はトマトジュースの上清のみによっても見られたことから、アミノ酸やクエン酸などのトマト中の水溶性成分が有効成分であることが示唆された。

これまでに同社が行ってきたヒト試験で見られたトマトジュースによる疲労軽減効果にも、これらの成分が関与していると考えられるという。また今回の研究の結果より、運動前や運動の合間にトマトジュースやトマトを含む製品を摂取することで、運動時の疲労を軽減することが期待できると同社はコメントしている。