ビジネス、そして社会生活のあらゆる側面で「ソフトウェア」が担う役割は、近年その重要性を増している。そうした状況の中、開発現場においてソフトウェア品質の向上や生産性の向上を図る取り組みとしてのALM(Application Lifecycle Management)が、改めて注目を集めている。

日本マイクロソフト(以下、マイクロソフト)では、このALMの展開を支援するための取り組みとして、同社の開発支援ツール群である「Visual Studio」において、開発業務にかかわるチーム全体の作業効率を向上させるためのサーバ製品である「Team Foundation Server」の機能を強化するとともに、この製品を核としたALM環境構築の支援を積極的に行っていく方針を打ち出している。また、その推進においては、ALMに関するノウハウと製品知識とを兼ね備えたソリューションパートナーとの協業を、これまで以上に深めていくとしている。

今回は、そうしたパートナーの1社である「富士ソフト」と、日本マイクロソフトとの協業の状況について紹介する。富士ソフトは、マイクロソフトが特にALM分野での専門性について認定してパートナープログラム「ALMコンピテンシー(ゴールド)」を取得しており、共同での顧客開拓を行っているほか、Visual StudioでのALM実践方法を紹介する無料セミナーの開催、開発環境導入計画サービスなどの提供を行っている。

富士ソフト秋葉原オフィスの壁面には認定パートナーの証が掲げられている

自らもシステムソリューションを数多く提供している富士ソフトが、よりユーザーの開発現場に近い立場で推進する「Visual StudioでのALM」について、その内容や市場での関心について聞いた。

参考記事

【レポート】役割が拡がるVisual Studio - ALMツールとしての普及に向けパートナー強化
http://news.mynavi.jp/articles/2012/04/12/vs/index.html

協業を進める中で見えた「ALM」の現状

マイクロソフトと富士ソフトのパートナーシップは長期にわたるものだが、改めてその関係が強化されるきっかけとなったのは、2010年3月の発表だった。富士ソフトの白石社長(当時)、マイクロソフトの樋口社長による会見も行われた協業強化の発表の中では、富士ソフトがWindows AzureやOffice365(当時はBPOS)といったクラウド関連の領域も含めたマイクロソフトソリューション全般について、組織面、サービス面、人員面を大幅に拡充し、マイクロソフトがそれを全面的に支援していくことが示された。

富士ソフト ソリューション事業本部MS部 MS戦略推進グループ 課長の青木大介氏

今回のALM領域での協力体制も、この協業強化の流れの中にあるという。富士ソフトソリューション事業本部MS部で、MS戦略推進グループの課長を務める青木大介氏は「富士ソフト自身も、ユーザーとしてVisual Studioをシステム開発、プロジェクトマネジメントの中で日常的に活用しており、その内容を熟知しています。その点でも、ALM分野での協業には、互いにメリットがあると感じました」と語る。

「さらに、われわれがソリューション開発を業務として提供しているお客様も、システム開発の品質向上や効率の向上、プロジェクト管理の合理化に対する意識が高い方が多いのです。マイクロソフトがALMの推進に力を入れるタイミングで、改めて協業を深める意味はそこにもありました」(青木氏)

富士ソフトでは、ALM分野での協業を本格化させるにあたり、共同でプロファイリングを実施した。その結果から、80社近くにおよぶ企業を選定し、約3カ月をかけてニーズのヒアリングを行ったという。結果としては、約半分の企業から、ALMの最適化を両社とともに進めていくことに前向きな提案が得られたという。また、既に何らかのALM環境の構築を行い最適化が実現できていた企業は全体の4分の1ほどだったという。

「ALMによる、開発品質や効率向上の取り組みは、開発を業務として行っている企業であれば、大部分がトップダウンで既に行っているのではないかとの仮説もありました。しかし、実際にはそうではなく、案件ベースやプロジェクトマネージャー個人での取り組みに留まっているケースが多いのが実状でした。また、既に取り組みを行っているというところでも、運用面での統制がきちんと取れているかと言えば、必ずしもそうではないようです。そういったお客様に対して、最適な環境を作っていくためのサポートをしていきたいと考えています」(青木氏)