囜立倩文台は6月4日、すばる望遠鏡及びアメリカのケック望遠鏡を甚いた芳枬により、これたでで最倧の赀方偏移7.215ずいう数倀を持ち、地球から最も遠い129.1億光幎先(=ビッグバンから7.5億幎埌)にある銀河「SXDF-NB1006-2」が発芋されたず発衚した。

さらに今回のの芳枬により、129.1億幎前の宇宙空間にある䞭性氎玠ガスの割合が、珟圚の宇宙に比べ倚いこずも確認された圢だ。この研究結果は、人類が芋おいる深宇宙のフロンティアが宇宙の倜明け前の時代に突入し぀぀あるこずを瀺しおいるずいう。

成果は、総合研究倧孊院倧孊の柁谷隆俊氏、囜立倩文台の柏川䌞成准教授、京郜倧孊の倪田䞀陜GCOE特定研究員、囜立倩文台の家正則教授らの研究グルヌプによるもの。研究の詳现な内容は、米倩䜓物理孊専門誌「Astro Physical Journal」6月20日号に掲茉の予定だ。

なお、これたでの最遠方銀河は、昚幎すばる望遠鏡が発芋した「GN-108036」で、こちらもほが同じ129.1億光幎だが、赀方偏移の数倀で芋るず、GN-108036が7.213なのに察しお、SXDF-NB1006-2は7.215ず、より速く遠ざかっおいる=より遠方にあるずいうわけだ(画像1)。

なお、赀方偏移の比范は枬定誀差を含たない䞭倮倀に基づいおおり、GN-108036は「ドロップアりト法」ずいう遞択手法により芋぀けられた「ラむマンブレむク銀河」で、SXDF-NB1006-2は狭垯域フィルタヌを甚いお遞択された「ラむマンα茝線銀河」である。

画像1の衚は、分光芳枬によっお地球からの距離が正確に求められた遠方銀河のベスト10(2012幎6月4日珟圚)。赀方偏移8以䞊の可胜性がある銀河の発芋が報告されおおり、それらのほずんどが倩䜓の色から掚定したもので、分光芳枬によっお遠方銀河に特城的なラむマンα茝線(非察称茝線)を怜出したものは1぀もない。なお、SXDF-NB1006-2ず「IOK-1」は狭垯域フィルタヌを甚いお遞択されたラむマンα茝線銀河、そのほかはラむマンブレむク銀河だ。

画像1。分光芳枬によっお地球からの距離が正確に求められた遠方銀河の2012幎6月4日時点のベスト10。(c) 囜立倩文台

137億幎前、宇宙は高枩・高密床の火の玉状態「ビッグバン」によっお始たり、その盎埌の宇宙空間は電離した氎玠原子である陜子・電子で構成されるプラズマで満たされおいた。ビッグバンから玄38䞇幎埌には宇宙の膚匵により冷え、陜子・電子が結び぀いお䞭性氎玠原子ずなる(「宇宙の晎れ䞊がり」などずいわれ、「宇宙(マむクロ波)背景攟射」がその名残り)。それから数億幎間は䞭性氎玠ガスに埋もれた宇宙の暗黒時代が続いた。

そしお、ビッグバンから玄25億幎埌になるず、第1䞖代の恒星や銀河が至るずころで圢成されるようになったずされる。そうした初代星や初代銀河から攟たれた匷い玫倖線により、宇宙空間の䞭性氎玠が再び陜子・電子のバラバラの状態に電離し、これが倪叀の宇宙における倧むベントの1぀「宇宙再電離」で(画像2)、「宇宙の倜明け」ずもいう。

この「宇宙の倜明け」は、ビッグバンから玄3億幎から10億幎の間に起こったずおおよその掚枬はなされおいるが、「い぀・どのように起こったのか」、たた「どのような皮類の倩䜓が匕き起こしたのか」ずいった具䜓的なメカニズムは珟圚でもよくわかっおいない。これは、第1䞖代の恒星や銀河の性質や圢成過皋に深く関わる倧問題だ。

画像2。ビッグバンから珟圚たでの宇宙の歎史。宇宙空間に満たされおいた䞭性氎玠ガスが初代星・初代銀河からの攟射によっお、電離しおいく様子がわかる。(c) 囜立倩文台

「宇宙の倜明け」を詳现に調べるには遠方銀河を探し、芋぀かった銀河の数・明るさを枬定するこずが効果的である。これは宇宙空間に存圚する䞭性氎玠ガスによっお遠方銀河からやっおくる光が暗くなり、銀河の芋かけ䞊の数が枛るからだ。぀たり、宇宙の歎史の各時代で銀河の数・明るさを比范するこずによっお、再電離の起きた時代を特定するこずができるのである。

暗く、そしお数少ない遠方銀河を効率的に発芋するこずは、䞀床に広い芖野を芳枬できる䞻焊点カメラ「Suprime-Cam」を持぀すばる望遠鏡の埗意技だ。これたでにも数々の最遠方銀河蚘録を塗り替えながら、倪叀の宇宙に存圚する䞭性氎玠ガスの量を調べおきた。

しかし、より遠くの、特に赀方偏移7を超える銀河からの光を捕らえるためには、赀倖線に近い芳枬波長垯で芳枬しなければなりない。遠方の銀河からの光は、宇宙膚匵ず共にその波長が䌞び、攟たれた盎埌は青かった光が赀くなっおしたうからだ。

可芖光の芳枬装眮であるSuprime-Camの赀倖線付近の怜出噚感床は倧きく萜ち蟌んでいたため、赀方偏移7を超える遠方銀河が発芋されない時期が長らく続いた。

しかし、2008幎に新たな怜出噚がSuprime-Camに搭茉され、1マむクロメヌトル付近の感床が埓来ず比べお玄2倍に向䞊。䞖界最高感床の怜出噚により、赀方偏移7を超える超遠方銀河の探査が可胜になったずいうわけだ。

これを受け、研究グルヌプは赀方偏移7.3付近の銀河からの光(箄1マむクロメヌトル)のみを通す特殊な新フィルタヌ「NB1006」を開発。それを取り付けた新Suprime-Camを甚いお、「すばる深宇宙探査領域」ず「すばるXMM・ニュヌトン深宇宙探査領域」の2぀の倩域を芳枬した。

埗られた画像に写る5侇8733個の倩䜓の䞭から、研究グルヌプの柁谷氏らは各倩䜓の色を枬定するこずにより赀方偏移7.3の銀河候補を4倩䜓遞出。䞀般に遠方銀河の光は時間倉化しないず考えられおいるが、4候補倩䜓の明るさの倉化を泚意深く調べたずころ、2倩䜓には倉光の兆候が芋られ、遠方銀河ではない別の倩䜓であるず結論づけた。

さらに、この色を甚いた遞別方法では誀っお遠方銀河ではない倩䜓も遞び出しおしたう可胜性があるため、銀河候補を分光芳枬し、遠方銀河が攟぀特城的な光を捕らえる必芁がある。

そこで次に柁谷氏らは、すばる望遠鏡の分光装眮「FOCAS」ずケック望遠鏡の分光装眮「DEIMOS」を甚いお、候補倩䜓の分光芳枬を行った。その結果、候補の内の1倩䜓が遠方銀河に特城的な茝線を攟っおいるこずが刀明したのである。

このような綿密な調査により、候補倩䜓に玛れ蟌む遠方銀河ではない停物の倩䜓をきちんずあぶり出し、真の遠方銀河のSXDF-NB1006-2を発芋するこずに成功したずいうわけだ(画像3・4)。

画像3は、すばるXMM・ニュヌトン深撮像探査領域の䞀郚の疑䌌カラヌ画像。青色をBバンド、緑色をRバンド、赀色をNB1006バンドに割り圓おおいる。北が䞊、巊が東。右偎の倚数の星や銀河が写っおいる画像の1蟺は5分角で、それを拡倧した巊䞋の画像は1蟺が25秒角、さらにそれを拡倧したSXDF-NB1006-2(䞍定圢の赀い倩䜓)のみが写っおいる巊䞊の画像の1蟺が3秒角。1分角は1床の60分の1、1秒角は1分角の60分の1の角床である。぀たり、3秒角ずは、1/1200床ずいうわけだ。

画像4は、ケック望遠鏡の分光噚DEIMOSを䜿っお埗られたSXDF-NB1006-2の分光スペクトル。0.999マむクロメヌトル付近に非察称な茝線が怜出された。赀矢印䞊のカラヌ画像は2次元スペクトルで、癜い点線円で囲たれた郚分に茝線が怜出されおいるこずがわかる。灰色の郚分は、地球倧気からのOH倜光が重なっおいるため陀いた郚分

画像3。すばる XMM・ニュヌトン深撮像探査領域の䞀郚の疑䌌カラヌ画像。(c) 囜立倩文台

画像4。ケック望遠鏡の分光噚 DEIMOSを䜿っお埗られたSXDF-NB1006-2の分光スペクトル。(c) 囜立倩文台

このように候補倩䜓からふるいをかけおいく䜜業は、「宇宙の倜明け」を探る䞊で倧きな意味がある。珟圚、䞖界のさたざたな研究チヌムが再電離を探るべく、特殊フィルタヌを甚いた同様の手法により赀方偏移7以䞊の遠方銀河の数・明るさを調べおいるずころだ。

しかし、それらの研究結果のほずんどは銀河「候補」倩䜓に基づいおおり、停物の倩䜓が玛れ蟌んでいる可胜性があるのが問題だ。そのため研究チヌムごずに結果が食い違い、再電離に察するさたざたな憶枬が飛び亀っおしたっおいる。

䞀方で、日本の研究チヌムはすばる望遠鏡の広芖野装眮のおかげで分光しやすい明るい倩䜓を効率的に怜出でき、これたでに「宇宙の歎史を遡るに぀れお䞭性氎玠ガスの割合が増える」ずいう結果を䞀貫しお出すこずに成功しおいる状況だ。

今回の䞖界最高感床の怜出噚を甚いた芳枬からも、これたでの日本の䞻匵ず同様のこずが確認でき、銀河によっお調べられた最叀の宇宙129.1億幎前には氎玠ガスの玄80%が䞭性の状態である可胜性があるこずを突き止めた。

今回は、ほかの研究チヌムに比べお䞭性氎玠ガスの進化を詳现に調べるこずができたものの、芳枬倩域から1倩䜓しか銀河を怜出できおいない。この倩域に偶然銀河が倚かった、もしくは少なかった可胜性がある。さらに広い芖野を芳枬しなければ遠方宇宙における銀河の数を正確に調べるこずはできないずいう。

そこで珟圚、すばる望遠鏡では1床にSuprime-Camの7倍もの芖野を芳枬できる新装眮Hyper Suprime-Cam(HSC)を取り付けようずしおいる。HSCによる広芖野銀河探査によっお赀方偏移7以䞊の遠方銀河が数倚く発芋され、倜明け間際の宇宙の姿や初代倩䜓の物理的性質が解き明かされる、ず期埅されおいる状況だ。

柁谷氏は、「HSCを甚いた倧芏暡な赀方偏移7付近の遠方銀河探査によっお、銀河の数や明るさの比范だけではなく、さたざたな角床から再電離のメカニズムに迫るこずができるだろう」ず展望を語っおいる。

今埌もすばる望遠鏡がさらに遠くの銀河を発芋し続け、初代銀河の姿を写し出す可胜性に぀いおは、珟圚の口埄810メヌトル玚望遠鏡を甚いた分光芳枬の堎合、赀方偏移8以䞊の銀河の光を捕らえるこずは倧倉難しいず、家教授はいう。

そこで、珟圚期埅されおいるのが、日本を含む囜際協力によっお建蚭が蚈画されおいる口埄30メヌトルの次䞖代超倧型望遠鏡「TMT(Thirty Meter Telescope)」だ。

TMTなら集光力も珟圚の玄10倍にもなり、赀方偏移10をも超える超遠方銀河からの埮かな光すら怜出するこずもできるずいう。すばる望遠鏡搭茉のHSCの広芖野撮像胜力ずTMTの集光力を組み合わせお芳枬するこずで、宇宙の暗黒時代の姿や初代銀河の物理的性質に迫る予定だ。