カネカは5月21日、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の横田力男博士を中心とする材料開発グループと共同で、従来、高分子膜材料として唯一、宇宙機に利用されてきた耐熱性ポリイミド(PI)に、宇宙環境耐性を損なうことなく、新たな特性となる加熱融着性を付与することに成功したと発表した。同成果の詳細は2012年5月29日(火)~31日(木)の期間でパシフィコ横浜にて開催される「第61回 高分子学会年次大会」にて発表される予定のほか、同学会の会期中において併設の「高分子学会設立60周年記念展示会 Polymer Expo2012」のJAXAとの共同ブースにおいても紹介される予定。
この高耐熱・熱融着性PI(Institute of Space and Astronautical Science - Thermoplastic Polyimide:ISAS-TPI)は、同社の保有するPIの合成技術に加え、JAXAを中心とした複数の企業との協業により厚さ7.5μmのロールフィルムに加工され、2010年5月に種子島宇宙センターから宇宙に打ち上げられた小型ソーラー電力セイル「IKAROS」の薄膜材料として、同社の超耐熱PIフィルム「APICAL-7.5AH」とともに採用された。
ISAS-TPI薄膜の高い耐熱性および機械特性は、IKAROSの宇宙空間における正方形状φ20mの大規模展開および航行実験の成功によりすでに実証済みであり、この成功により、ISAS-TPIは近未来の太陽光発電衛星や宇宙大型薄膜構造体などの開発に必須の高分子材料となるものと期待されると同社では説明している。
なお、JAXA内ではすでに次期大型ソーラーセイル開発の検討が進んでおり、ISAS-TPIの本格採用に向け、以下の開発目標を掲げた研究を同社と取り組んでいるという。
- 耐引裂性の付与
- 長期間の宇宙環境で使用可能な接着剤および融着剤としての用途展開
- 紫外線耐性の改善および透明性の付与(薄膜デバイスの表面保護膜への用途展開)
- 接着特性、加工性の改善