「東京国際航空宇宙産業展(ASET)2011」が10月26日~28日の3日間、東京ビッグサイトにて開催された。東京都と東京ビッグサイトが共催している航空宇宙関連の展示会で、開催は2009年に続いて2回目。機体や部品のメーカー、運輸・運航関連の企業、自治体など、260社・団体が集まり、自社の技術やサービスなどをアピールしていた。

「東京国際航空宇宙産業展(ASET)2011」が開催された。この展示会は隔年開催なので、前回は2009年だった

今年は東4ホールが会場。展示に加えて、講演やセミナー、ヘリコプターのデモフライトなども行われた

どちらかというと航空関連の展示の方が多いのだが、本レポートでは宇宙分野に関する話題を中心に報告したい。

「はやぶさ」の特別展示コーナー

会場の一角に設けられていたのは、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発した小惑星探査機「はやぶさ」の特設展示ゾーン。あまり真新しいものはなかったのだが、このゾーンでは、「はやぶさ」のミッションや成果に関するパネル紹介、「はやぶさ」の1/2モデルやM-Vロケットの1/10モデル、イオンエンジン「μ10」の展示などがあった。

「はやぶさ」の展示ゾーン。ちょうど真ん中には「はやぶさ」の1/2スケール模型が置かれていた

「はやぶさ」に関わった企業の紹介も。清水機械は、ターゲットマーカーの試作などを担当した

姿勢制御系の最新コンポーネント

三菱プレシジョンは、人工衛星に搭載するリアクションホイール(RW)と慣性基準装置(IRU)を出展していた。RWは姿勢を制御するためのアクチュエータで、IRUは姿勢を検出するためのセンサ。どちらも回転体を内蔵する装置であるが、用途はまったく逆だ。

展示されていたRWは、中型衛星向けの「タイプM」、小型衛星向けの「タイプS」、超小型衛星向けの「高角運動量マイクロホイール(HMMW)」といった3モデル。タイプMについては、すでに温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)で搭載された実績がある。展示はなかったが、このほか大型衛星向けに「タイプL-A」もある。

同社は日本で唯一のRWメーカー。当初は海外品のライセンス生産を行っていたが、これらの新シリーズはJAXAと共同開発し、国産化を果たしたものだ。これから市場の拡大が見込まれる超小型衛星向けのRWもラインナップしているのは大変興味深い。

中型衛星向けの「タイプM」。最大30Nmsまでの角運動量を持つことができる

左は「タイプS」で、右が「HMMW」。現在試験中で、来年度より販売を開始する予定

展示されていたIRU「タイプIIIA」は、地球資源衛星「ふよう1号」(JERS-1)で初めて搭載されたもの。以降、国内の衛星33機で搭載された実績がある。現在、性能はそのままにフットプリントを抑えた「タイプIIIC」の開発を進めており、今年度末までには試験が完了する見込みとなっている。

宇宙用の「チューンド・ドライ・ジャイロ」(TDG)のカットモデル。実物を切ったそうで、配線まで見えている

ほとんどの国内衛星で採用されているという「タイプIIIA」。この中にTDGが3台内蔵されている

これは「はやぶさ」のどの部分?

この展示会では、部品関係のメーカーによる展示も多い。個人的には、何の部品だか良く分からないようなものを見るのも楽しみの1つなのだが、東京通信機材のブースには、「はやぶさ」で使われたという、ある部品が展示されていた。これが何だか分かるだろうか。

とても小さな部品だ

これはブレード

これはアンビル

そしてこれがボディ

同社によると、これは組み合わせて、ワイヤーカッターになるのだとか。同社も国から表彰されたときに、初めてこれが「はやぶさ」に使われていたことを知ったそうだが、具体的に、これがどの場所で使われたのかは分からないそうだ。

筆者が知る範囲では、確かワイヤーカッターはカプセルの蓋閉め機構と、ターゲットマーカーの分離機構で使われていたはずだが、ほかにもあるかもしれない。どの部分で使われたかは想像するしかないが、いずれにしても、これがもし動かなくてワイヤーが切れなかったら大変なことになるわけで、とても重要な部品であることは間違いない。

「はやぶさ」の快挙は、このようなたくさんの企業の優秀な技術があって、初めて成し遂げることができたのだ。