これまで均一と考えられていた地球内部のマントルが、化学組成の異なる上下2層の構造になっていることを、東北大学や高輝度光科学研究センターなどの研究チームが、大型放射光施設「Spring-8」(兵庫県)を使った実験解析によって明らかにした。研究成果は地球の形成や進化の解明にもつながるもので、英科学誌「ネイチャー」(5月3日付)に発表された。

地球の内部では、中心に半径3500キロメートルの核(外核・内核)があり、その周囲を厚さ2900キロメートルのマントルが包み、その外側を厚さ5-7キロメートルの地殻が覆っている。地震波の伝わり方などから、マントル内部の深さ660キロメートルに不連続面があり、これを境にマントルが上部・下部の2層に分かれることが知られていた。

このうち上部マントルは、火山のマグマなどの噴出物により、「カンラン石」と呼ばれるマグネシウムを主としたケイ素鉱物であることが知られ、下部マントルについても、地球の誕生から40数億年にわたる対流運動によって全体が均質化し、上部マントルと同じ化学組成と考えられていた。

研究チームは「Spring-8」で、温度2700℃・圧力124万気圧という超高温高圧の下部マントルと同じ環境を再現し、物質試料の弾性波速度(地震波速度)を測定した。その結果、上部マントルの化学組成とは一致せず、ケイ素に富む組成となることが分かった。この組成は、太陽系の惑星などをつくった始原的な隕石(C1コンドライト)の組成とも一致することが分かった。

今回の研究成果は、これまで考えられてきた地球の内部構造のモデルや、地球の進化・対流モデル、地球の誕生モデルを根底から覆すもので、まったく新たなモデルが必要となるという。

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テクノフロント・石川 哲也・理化学研究所播磨研究所長、放射光科学総合研究センター長【桃栗3年柿8年、SACLAは何年で実をつける?】
ホットスポットの根っこマントル最下部