米General Electric(GE)のヘルスケア事業部門のGEヘルスケアは4月11日、アルツハイマー病をはじめとする神経変性疾患の克服に向けた研究活動を強化することを発表した。
具体的には、同社のメディカル・ダイアグノスティクス(体内診断薬)事業部門が、東北大学発ベンチャー企業のクリノと、アルツハイマー病患者などの脳内に蓄積するタンパク質「タウ」を描出する診断薬の開発に向けた共同研究契約を締結した。今後、アルツハイマー病の診断・治療における研究開発で世界をリードする東北大学の研究チームと共同で、タウに結合するPET(陽電子断層撮影装置)検査用の放射性薬剤の研究開発を進めていくことが目的。同薬剤の脳内集積をPET検査で画像化することで、タウ蓄積に基づくアルツハイマー病の確定診断実現につなげることを目指すという。
2010年の世界の推定アルツハイマー病患者数は約3560万人で、2050年には1億1540万人と3倍以上に増えると予測されている。また日本国内の患者数は、世界に先駆けて進む超高齢化などに伴い、2010年の約200万人から2020年には325万人まで増加すると見込まれている状況だ。
同疾病は、脳内にタンパク質の1種である「β(ベータ)アミロイド」やタウが蓄積することで引き起こされると見られており、βアミロイドは発症の30年前、タウは10年以上前から脳内蓄積が始まると考えられている(画像)。
GEヘルスケアはβアミロイド検出用PET薬剤としてすでに、米ピッツバーグ大学で開発され2003年に同社が同大学から独占的権利を取得した「11C-PIB」の技術を世界的に提供中だ。また、半減期が20分という11C-PIBに比べて5倍以上の110分となる「18F-Flutemetamol」の開発も進めている。これらの薬剤でβアミロイドを捕捉することで、アルツハイマー病の超早期診断につながると見込まれている具合だ。
加えて、今回のクリノとの共同研究でタウ蓄積を捕捉する薬剤が特定されると、アルツハイマー病の重症度診断が可能になるほか、製薬企業・研究機関によるタウを標的とした分子レベルの治療薬の開発促進につながると見込まれている。
なおGEヘルスケアとクリノは今後、両社での研究開発に加えて、ほかの企業や研究機関などとの協業を進め、タウ蓄積の捕捉や標的薬の開発など、より迅速で精度の高いアルツハイマー病の診断・治療に貢献することを目指すとしている。