Agilent Technologiesの日本法人であるアジレント・テクノロジーは4月11日に東京で記者会見を開催し、アナログ帯域幅が63GHz(2チャンネル使用時)と広いデジタル・オシロスコープ(デジタル・オシロ)「Agilent DSOX/DSAX 90000Qシリーズ Infiniium」を開発し、同日に販売を始めたと発表した。同社は2010年4月27日にアナログ帯域幅が32GHzのデジタル・オシロ「Agilent Infiniium 90000X」を発売しており、今回の機種はさらに上位に位置づけられる。出荷はこの7月に始める予定である。

記者会見の冒頭で挨拶したアジレント・テクノロジー代表取締役社長の梅島正明氏は、「90000Qシリーズ」開発の背景を説明した。通信やネットワークなどのさらなる高速化によって最先端技術による搬送波の基本波周波数は14GHz/16GHzに達しており、その3次高調波である42GHz/48GHzの信号を観測できるオシロスコープが求められるようになったという。

アジレント・テクノロジー代表取締役社長の梅島正明氏

「90000Qシリーズ」開発の背景

「90000Qシリーズ」では、「90000Xシリーズ」の開発で得られたハードウェア資産を流用するとともに、改良を加えることで帯域幅を広げている。アナログ・フロント・エンドはInP化合物半導体のヘテロバイポーラICによるマルチチップモジュールで実現した。これは基本的には「90000Xシリーズ」と同じものである。

大きく違うのはデータ収集ボードの枚数だ。「90000Xシリーズ」では33GHz×1チャンネルのデータ収集ボードを2枚搭載し、2チャンネルの33GHz入力に対応していた。これに対して今回の「90000Qシリーズ」では、33GHz×1チャンネルのデータ収集ボードを4枚、搭載した。そしてデータ収集ボードをインタリーブ動作させ、63GHz×2チャンネルのデータ収集サブシステムとして動かした。

「90000Qシリーズ」のハードウェア構成

記者会見の会場では信号発生器(左側)で出力した60GHzの正弦波を「90000Qシリーズ」の試作機(右側)に入力し、液晶ディスプレイに表示してみせていた

「90000Qシリーズ」の品種は10種類。アナログ帯域幅が20GHz~63GHzと異なる5種類のオシロスコープ「DSOX」に、解析機能(ジッター解析機能とシリアルデータ解析機能)を追加した「DSAX」を加えた。価格(税抜き参考価格)は例えばローエンドではアナログ帯域20GHz/20GHz(2チャンネル/4チャンネル)の「DSOX92004Q」が2,377万4,381円、解析機能を追加した「DSAX92004Q」が2,589万1,024円。ハイエンドではアナログ帯域幅が63GHz/33GHz(2チャンネル/4チャンネル)の「DSOX96204Q」が5,217万8,856円、解析機能を追加した「DSAX96204Q」が5,442万470円である。

既存機種「90000Xシリーズ」(左)と新型機種「90000Qシリーズ」(右)の概要

またアジレントは同日、オシロスコープで取り込んだ信号波形をパソコンで解析するソフトウェア「Agilent N8900A InfiniiView」の販売を開始したと発表した。オシロスコープで取り込んだ波形をパソコンに移しかえてから、波形を詳細に観測・解析し、レポートを作成できる。開発部署でオシロスコープを共有している場合に、オシロスコープの占有時間が実測定の時間だけで済むので、部署内でオシロスコープを効率的に利用できるようになる。価格は8万3,000円(税抜き参考価格)、出荷開始は5月1日の予定。