京都大学は3月22日、真横をはじめどの方向にも移動できる、未来型乗り物「Permoveh(Personal Mobile Vehicle)」を開発したと発表した(画像1)。京大工学研究科機械理工学専攻の小森雅晴准教授らの開発だ。
1人用の移動装置であるパーソナルモビリティへのニーズが高まっている。特に、高齢者や足の不自由な方にとっては、1人乗りの移動装置が生活の中で重要な役割を果たしている状況だ。
現在、1人用の移動装置として車いすや高齢者用電動移動装置などが販売されているが、これらの移動装置は前後移動や向きを変えながら斜め方向に移動することは可能ではあるものの、真横への移動はできない。
病室でベッドのすぐそばに移動したい時や、オフィスにおいて机に向かったまま横に移動したい時、あるいは、混雑したエレベーター内での移動など、真横に移動したい場面は日常生活の中に多く存在している。
しかしながら、従来の移動装置では直接には真横に移動できないため、真横に移動するためには、前後・斜めの移動を繰り返しながら徐々に横に移動する「切り返し作業」が必要だった。そのため、病室やオフィスなどの狭い空間内では移動に苦労することが多くあったのである。
もちろん、「切り返し作業」をするためのスペースを余分に確保しておくことも必要だ。そのため、真横に移動可能なパーソナルモビリティが必要とされていた。
実際、外周ローラが自由回転する車輪を用いることで真横移動を可能にする移動装置もすでに開発されているが、外周ローラの回転の不確実性のため、安定した移動が困難であるという問題があったのである。
小森准教授らは、図2に示すように、車輪本体と車輪の外周部に配置された外周ローラをそれぞれ別々に駆動し回転させることが可能な全方向駆動車輪を開発した。
全方向駆動車輪は車輪本体が回転すると前後方向に、外周ローラが回転すると横方向に、車輪本体と外周ローラが共に回転すると斜め方向に移動する。この全方向駆動車輪を用いることで、前後だけでなく真横にも斜めにも移動することができ、その場で回転して向きを変えることも可能なPermovehの開発に成功したというわけだ。
これにより、病室やオフィス、エレベーターなどの限られたスペースにおいて、容易な移動や方向転換を実現。周囲の人とも調和して移動できるパーソナルモビリティとなったのである。
また、冒頭で軽く触れたように、任意の方向に移動できるPermovehの機能は、産業分野への応用も可能だ。工場や倉庫では無人搬送車やフォークリフトなどの搬送車両が多く用いられているが、これらが真横に移動することができれば、切り返し作業のために余分なスペースを確保する必要がなくなり、空いたスペースを有効利用できるようになる。
同時に、切り返し作業をなくして直接に真横に移動できるということは、運搬作業時間の短縮が可能ということであり、生産現場の効率化に貢献する形だ。さらに、全方向駆動車輪はコンベアと組み合わせて用いることで、物品の選別作業が可能となるというメリットもある。