産業技術総合研究所(産総研)は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が、2007年度から実施してきた「次世代高効率ネットワークデバイス技術開発プロジェクト」が今年度で終了し、2つの成果を達成したことを発表した。
電子機器、特に複雑な処理をするルータなどでは、従来、多数の回路基板をバックプレーンと呼ばれる接続基板を介して電気信号により接続をして処理を行ってきたが、電気信号を用いた接続は通信速度に限界があったほか、消費電力も多くなるため、光トランシーバを用いて、電気信号を光信号に変換した後に、光信号により回路基板を接続する方式が実用化されつつある。しかし、例えば100Gbpsの光信号で基板間を接続する場合、100Gbpsの光トランシーバは、手のひら程度の大きさであるか、あるいは、小型のものは水冷による冷却が必要であった。今回のプロジェクトでは25Gbps×4個構成の面出射型レーザ、高速受光ダイオード、インタフェースCMOS-LSIそれぞれの消費電力低減を図り、2Wの消費電力で、空冷にて100Gbps動作を実現した実装面積約1.2mm2の、小型光トランシーバを開発した。
また、開発した小型光トランシーバの動作を実証するため、エッジルータに開発した小型光トランシーバを実装して、動作実証を行ったが、空冷動作が可能なため、これまでの大掛かりな冷却装置が不要となり、光トランシーバの適用範囲の拡大が可能になるという。
もう1つは、非圧縮スーパーハイビジョン配信可能とする超高速光LAN-SANシステムの開発である。映像の制作現場ではネットワークを介して記憶装置に格納された映像信号を読み出し編集することが一般的になっているが、将来の超高精細映像であるスーパーハイビジョンを制作する場合、1秒あたり72Gbitの映像データを、複数の映像を切り替えながら配信する必要があるため、今回のプロジェクトでは、160Gbps OTDM方式の光ネットワークを採用して、2系統のスーパーハイビジョンデータをネットワーク上で切り替えて配信することを目指したデバイス、モジュール、システム開発を実施、2チャネルの72Gbps非圧縮スーパーハイビジョン信号の配信動作を実現した。
具体的には、40Gbpsイーサネットシリアル光トランシーバ、量子ドット高効率半導体光増幅器に高速全光スイッチを組み合わせて160Gbpsの高速動作を達成した「ハイブリッド集積化OTDM-NIC」を開発したほか、小型、低挿入損失、低電力励起パワーが特徴の反射型ISBTをベースに低消費電力の光ゲートおよび160Gbps光信号へのスーパーハイビジョン信号を変換する技術を開発したことで実現した。
これらのほか、研究成果として、複数のLAN間を、WANを経由して接続するLAN-WAN間のシームレス相互接続技術を開発。同技術では、次世代のLAN-SANの規格として有望な40Gbpsシリアルイーサネットを想定して、40G LAN-WAN信号変換技術、40GbEインタフェース変換技術、小型40Gシリアル光トランシーバ、ダイナミックレンジ拡大SOA-MZI型波長変換技術をそれぞれ開発し、これらを接続することでLAN-WAN間のシームレスな信号転送を実証した。さらに、エッジルータの高速ネットワーク対応技術として高速トラフィック分析技術向けにAFM分析アルゴリズムをベースに40Gbps対応トラフィック分析装置が開発されたほか、25Gbpsの光信号波形をソフトウェア補正無しに観測できるSFQ回路で構成した50GS/sの5bitAD変換器を用いたリアルタイムオシロスコープが開発されたという。