2012年2月4日に公開される映画『ベルセルク 黄金時代篇I 覇王の卵』。この作品のアニメーション制作を手がけるSTUDIO4℃に体当たり取材に行ってきました!

エントランスに入り、まず目に飛び込んでくるのはSTUDIO4℃の歴代作品ポスターの数々。日本アカデミー賞最優秀アニメーション作品賞の『鉄コン筋クリート』(2006)や、文化庁メディア芸術祭アニメーション部門大賞の『マインド・ゲーム』(2004)など、STUDIO4℃の手掛けてきた作品はいずれもその質の高さにおいて評価されています。

代表の田中栄子さんは、スタジオジブリ『となりのトトロ』(1988)、『魔女の宅急便』(1989)のラインプロデューサーを務めた経歴を持ち、現在もアニメーション業界の最前線を走り続けている方。誰よりも強い作品への情熱とストイックさを持ちながらも、一見STUDIO4℃のエッジィな作品とは結びつかない、とても優しい雰囲気をお持ちの方です。

田中さんに案内して頂き、さっそく制作現場へ。アニメーターの方達は取材前日、作業の大詰めで徹夜した方が多かったとのことで、取材当日まだ出勤されている方はちらほらでしたが、オフィス内では、アニメーターの方や背景美術の方が集中して作業していました。背景画を作成している部屋では、デジタルでの作業と、アナログ着彩の両方の作業を見る事ができました。

特に水彩で緻密に描かれたアナログの背景画は息をのむ程の美しさ。たとえ画面に映るのが数秒間だとしても、石ころひとつ、木の葉1枚にまで命を吹き込みながら描いていきます。まさにプロフェッショナルの仕事場という印象! さらに驚いたのが、絵コンテとキャラクターデザイン資料の圧倒的な量です。

実はこの映画版ベルセルク。企画が立ち上がった当初は、1本の長編映画の予定だったそうです。しかし絵コンテを描いていくうちに総カット数が4,000カット近くなってしまい、「これは3部作にするしかないね」(田中氏談)と、今回の三本立ての形式に収まったとか。それだけ、原作の世界観や人間ドラマを、丁寧に描き出しているということ。

キャラクターが身につける甲冑や衣装の一つひとつも、パーツや装着方法に及ぶまで、細密な設定が決まっています。フランスロケを行ったり、甲冑愛好会(そんな団体があるとは! )の指導を受けたりと、徹底的なリサーチが行われたとのこと。キャラクターデザインを手掛けたのは恩田尚之氏。当たり前ですが、とにかく絵が天才的に上手い……あらゆる角度から様々な表情のキャラクターを描き分ける画力は圧巻です。映画を見に行く方は、ストーリーはもちろん、ぜひ細部の描写や美しい背景などにも注目してみて下さいね!

以上、駆け出しイラストレーターの私にとって、感動と驚きの連続のSTUDIO4℃潜入取材でした!

すっかりベルセルク色に染められて帰ったのでした

のでこ
駆け出しイラストレーター。大学卒業後、アパレル企業に勤めるも「やっぱり、絵が描きたい! 」という気持ちが膨らみ退職。絵で食べていく方法を模索中。