浜松ホトニクスは、従来の科学計測用CMOSカメラに比べて、より高感度、高解像度、高速読み出し、低ノイズ、高ダイナミックレンジなどを実現した、デジタルカメラ「ORCA‐Flash4.0」を、生命科学分野などの用途に国内外の大学や研究機関のバイオ・物理研究者などに向けて12月1日から発売することを発表した。
カメラの感度を決める要素として、入射光を電荷に変換する量子効率があるが、同製品は、設計の最適化により開口率を上げ、波長600nmにおいて70%以上の高い量子効率を実現したことで、従来の科学計測用CMOSカメラの量子効率(50~60%)を凌ぐ感度を実現した。また、一般的に量子効率が高いEM‐CCDカメラは、電子増倍する過程で発生するノイズ(過剰雑音)により増倍にバラつきが出てくるのに対し、同製品はノイズが発生しない安定した画像が得られるため、EM‐CCDカメラに比べても劣らない高感度な画像を得ることが可能だ。
さらに、ダイナミックレンジは、従来の科学計測用CMOSカメラ比で5倍以上広い23,000:1であるため、暗い蛍光から明るい蛍光まで幅広い領域の蛍光観察に、1台で対応することが可能となった。
このほか感度を決めるもう1つの要素としてノイズ特性があるが、こちらは画素ごとにCDS(相関2重サンプリング)を行うことでノイズを抑制したうえで、画素ごとのアンプ特性の違いによるノイズのバラつきを最小限に抑えることで、従来の科学計測用CMOSカメラに比べ、ノイズは2倍以上の低減となる平均1.3エレクトロンを実現したほか、画素列のデータを並列同時に読み出すカラムA/Dの採用により、従来の科学計測用CMOSカメラに比べ、標準読み出し速度も毎秒100フレームと2倍以上高速化し、高速読み出しと低読み出しノイズの両立を果たした。加えて、暗電流特性にも優れており、1画素当たり毎秒0.05エレクトロン(-30℃時)と低く抑えることに成功したという。
加えて、400万画素の解像度(2048×2048)を実現したことにより、従来の蛍光観察用デジタルCCDカメラ(2/3型、130万画素)の約3倍、EM-CCDカメラ(512×512画素)の約2.5倍の観察視野を実現しており、一度に多くの細胞や現象を観察でき、高感度で高速読み出しの特長と併せ、実験・観測のスループットを向上することが可能となったほか、サブアレイ読み出しを用いることで、読み出しノイズ特性を犠牲にすることなく、最速毎秒25,600フレーム(2048×8)までの高速化が可能となり、従来の科学計測用CMOSカメラでは、400万画素で毎秒100フレームの高速撮影の場合、4秒から5秒間の撮影が限界であったものが、10数分間の高速連続撮影も可能となり、実験の中断や失敗のリスクを軽減すると同時に大事な実験サンプルの無駄を減らせるようになるという。
なお、価格はカメラ1台あたり189万円で、画像入力ボードやデジタルインタフェースケーブル(2本)、画像取得用ソフトウェアなどを併せたセットで238万3500円となっており、販売1年目で500台、3年後で1000台を目標とするとしている。