トヨタ自動車(トヨタ)が11月1日に発表した「介護・医療支援向けパートナーロボット」。同月3日から6日までお台場にある同社の無料自動車展示施設MEGA WEBのユニバーサルデザインショウケースで、それらのロボットを「トヨタ・パートナーロボットウィーク in MEGA WEB」としてイベントを実施。4種類(MEGA WEBで実際に展示されていたのは3種類のみ)のロボットの内の「バランス練習アシスト」(画像1)を実際に体験してみたほか、「移乗ケアアシスト」(画像2)、「自立歩行アシスト」(画像3)などの話を伺ってきたのでそれをお届けする(「歩行練習アシスト」(画像4)は技術取材会でも映像のみで、実機は披露されなかった)。
ゲームセンターにも置ける!? バランス練習アシスト
バランス練習アシストは、同社がソニーから開発途中で譲り受けた平行2輪倒立振子型立ち乗りモビリティ「Winglet」(画像5)をベースに開発された介護・医療支援向けパートナーロボットの1台だ(画像6~9)。
バランス確保が不自由な方のバランス機能の練習を支援することを目的としており、テニス、サッカー(キーパー)、バスケットボールの3種類のゲームで楽しみながら、そして記録を取りながらトレーニングすることができるのが特徴である。
従来のトレーニングでは、難易度が極端で容易な「立位保持」から一気に難易度の高くなる「バランスボード」、「片足立ち」、「継ぎ足歩行」などしかないため、難易度を利用者の状態によって細かく合わせられるようになっている点がこれまでにない大きな特徴となっている。
また、Wingletがベースのため、タイヤ径が小さいので乗り降りが楽なこと、そして視点が高くなり過ぎないために搭乗者が不安をあまり感じずに済むという点もポイント。さらに、ちゃんと安全ベストを着用してそれを周囲に組んだフレームの天井部分のフックで吊り下げて、転倒しないような配慮もなされている(画像10・11)。
実際に搭乗し、まずは最も簡単なテニスから試してみた(画像12)。前後の重心移動でプレイヤーキャラクター(画面左側にいるテニスプレイヤー)をモニタ上で上下させればよい(画像13)。ボールの軌道が点線で描かれるので、プレイヤーキャラクターの位置をだいたいボールと重なる部分まで移動させれば、後は自動で打ち返してくれる。一般的なゲームとは異なり、かなり易しめの設定だ。
画像12。実際に筆者がテニスに挑戦している際の様子。それほど難しくはなかった |
画像13。テニスの画面。ボールの軌道が点線であらかじめ表示されるので、だいたいそれに自分のキャラクターを合わせさえすれば自動的に打ち返してもらえるので、それほど難しくはない |
続いてはサッカー(画像14)。キーパーとなって、千本ノックならぬ千本シュート状態で次々と飛んでくるボールをキャッチしたり弾いたりして、ボールがネットに突き刺さらないようゴールマウスを死守するという内容である。今度は、左右方向に重心移動してキーパーを操る。左右方向といっても、回転する感じだ。なので、あまり行き過ぎるとグルリとモニタに背を向けてしまうような場合も(画像15)。
画像14。サッカーの画面。画面下のキーパーを左右に動かす。キーパーの左右にある点線の範囲内なら、キャッチするかパンチングでゴールを自動的に防いでくれる |
画像15。左右に機体を旋回させてキーパーを動かすため、気合いが入り過ぎるとこのようにモニタを正面に見られないぐらい旋回してしまうことも。かなり楽しそうな表情をしているが、本当に楽しめる(補助のお姉さんは大変そうでしたが) |
難易度設定を高くすると、同時にフィールドプレイヤーが何人も出てきてシュートし、そのボールの速度もそれぞれ異なるので、どのボールが一番早く到達するかを見極める必要がある。先にシュートされたボールよりも後からの方が速くて追い抜いたりといったこともあるので、無理して身体の正面でしっかりキャッチするのではなく、左右の手が届く範囲内でパンチングして弾くという守れる範囲の広さを利用するのもコツだ。ただし、難易度がさらに上がると、その守備範囲も狭くなっていくので、普通にゲームとしても本格的に楽しめる感じだ。いわば、Wiiのゲームのような感じである(画面の雰囲気もWii風)。
そして最後がバスケットボール(画像16)。前述の2つは自分でバランス練習アシスト自体を動かしていたわけだが、今度はロボット自体が搭乗者のバランスを崩そう(もちろん危険がない程度に)と能動的に動くのが特徴。バスケットボールの選手になるわけだが、敵に囲まれている形で、一定の円内に留まり続けることが目的となる。バランス練習アシストが動くために円から出そうになってしまうのだが、それを反対側に素早く重心を移していく。自分が動いた奇跡を終了後に確認できるので、乱れが少なくなればなるほど、運動能力が復活してきた証しとなるのである。また、トレーニングした履歴も残るので、日数が経つと自分の運動能力が回復してきたのもわかる仕組みだ(画像17)。
開発スタッフの方に話を聞いたところでは、ゲームに関しては外部のゲーム制作を手がけている企業に協力してもらって作っているという。健常者でもかなり楽しめるので、ゲームセンターに設置しても楽しんでもらえそうである。