京都大学(京大)の研究グループは、リウマチの関節炎の主体である滑膜に "レクチン様酸化LDL受容体1(LOX-1)" という蛋白が発現していることを世界で初めて発見した。また併せて、このシグナルをブロックすることで、滑膜細胞から分泌されている軟骨を破壊する酵素の産生が著明に低下すること、ならびに関節炎を生じさせたマウスにおいて、このシグナルをブロックすると関節の炎症および軟骨破壊が抑制されることも発見したという。これらの成果は、同大の伊藤宣 医学研究科リウマチ性疾患制御学講座准教授、および石川正洋 医学研究科整形外科学講座大学院生らの研究グループによるもので、米国リウマチ学会誌「関節炎とリウマチ」に掲載された。
関節リウマチは、関節内の滑膜組織が異常に増えることで関節内に炎症が起こる病気。進行すると関節破壊を起こし、日常生活に多くの障害が生じる。国内では約60万人の患者がいると言われ、30歳から50歳くらいの働き盛りの女性に起こりやすく、その社会的損失は非常に大きいものと思われる。しかし、関節リウマチを採血だけで診断できる検査法、および関節の軟骨破壊を抑制できる根本的な薬剤はこれまで存在していなかった。
今回の発見により、LOX-1がリウマチに大きく関与することがわかったが、これまでリウマチ患者においてLOX-1を測ることはできなかった。そこで、LOX-1の一部分が切離された "sLOX-1(可溶型LOX-1)" を測定したところ、sLOX-1は関節リウマチ患者において特に高い値を示し、炎症反応などの活動性とも一致。治療によって減少することがわかった。したがって、sLOX-1の測定により、関節リウマチの診断が容易にでき、また病気の勢いを判断できる可能性があるという。
今回の研究結果から、LOX-1を標的とする治療法は、軟骨破壊抑制の効果があり、既存の治療法では効果が出ない患者においても有効となる可能性があるという。また、sLOX-1の測定により、簡便かつ早期にリウマチを診断でき、さらに治療効果も判定できることから、「今後LOX-1シグナルは関節リウマチの診断と治療において有力な標的になると思われる」としている。