富士通は11月7日、次世代SPARCプロセッサ「SPARC64 IXfx」を搭載し、1ラックあたり2.5TFlopsの理論演算性能を実現したスーパーコンピュータ(スパコン)「PRIMEHPC FX10」を発表した。

同スパコンは最大1024ラック/98304ノード、6PBのメモリにより23.2PFlopsの理論演算性能をうたっている。2011年6月のTop500で1位になった次世代スーパーコンピュータ「京」で用いられたプロセッサ「SPARC64 VIIIfx」で採用していた自社45nmプロセスから、SPARC64 IXfxでTSMC(Taiwan Semiconductor Manufacturing)の40nmプロセスへと変更され、1プロセッサに16コアを内蔵。1コアあたり1848GHz(マルチラックモデル)もしくは1.650GHz(シングルラックモデル)で動作し、理論演算性能はそれぞれ236.5GFlops、211.2GFlops、電力あたりの処理性能は約2GFlops/Wを実現している。

また、「京」でも採用されたインタコネクト「Tofu」や、独自ミドルウェア「Technocal Computing Suite」のコンパイラ、ライブラリなどに加えて、独自技術である「VISIMPACT」により、MPI並列を組み合わせるハイブリッド並列への移行自動化が可能となっている。

FX10の特長

同スパコンは最大1024ラック/98304ノード、6PBのメモリにより23.2PFlopsの理論演算性能をうたっている。2011年6月のTop500で1位になった次世代スーパーコンピュータ「京」で用いられたプロセッサ「SPARC64 VIIIfx」で採用していた自社45nmプロセスから、SPARC64 IXfxでTSMC(Taiwan Semiconductor Manufacturing)の40nmプロセスへと変更され、1プロセッサに16コアを内蔵。1コアあたり1848GHz(マルチラックモデル)もしくは1.650GHz(シングルラックモデル)で動作し、理論演算性能はそれぞれ236.5GFlops、211.2GFlops、電力あたりの処理性能は約2GFlops/Wを実現している。

FX10の概要。シングルラック版とマルチラック版があり、価格はシングルラック版で5000万円程度。マルチラックモデルは構成により価格が異なってくるが、ざっくりと1PFlopsで50-70億円程度とのこと

また、「京」でも採用されたインタコネクト「Tofu」や、独自ミドルウェア「Technocal Computing Suite」のコンパイラ、ライブラリなどに加えて、独自技術である「VISIMPACT」により、MPI並列を組み合わせるハイブリッド並列への移行自動化が可能となっている。Tofuについては「京」に導入したものとアーキテクチャ的には同一のものとのことで、プロセスシュリンクなどは施されていないという。

SPARC64 IXfxの概要。1プロセッサあたりの消費電力は110W。シングルラックモデルだと、1システムあたり約20kW程度になるという

超並列スパコンの要となるTofuインタコネクトの概要。こちらは「京」に採用されたものと同じものが採用されている

さらに、運用面での工夫として、ミドルウェアのほか、Linuxをベースに超並列HPC向けに最適化を施したほか、10万台規模の計算ノードの制御を速やかに行うことを意識した階層化による分散処理の導入、そして言語処理にも同社がベクトル機を提供してきた時代から取り組んできた自動並列化技術を取り入れた高並列化コンパイラ/自動SIMD化対応や、Open MPIをベースとしたTofuトポロジへの最適化などが施されている。

ミドルウェア、運用管理環境、言語処理などのソフト面でも超並列での処理に最適化を施す工夫が施されており、そうしたコミュニティの活性化なども目指していくとする

同社では国家レベルでのHPC活用プロジェクトが世界各地で動きを見せてきていることを背景に、2015年にはHPCサーバ市場は1兆円規模に成長し、サーバ市場の1/4を占めるまでに大きくなると見ており、HPCのハイエンド分野には今回のFX10を、ミドルレンジにはPCクラスタ製品、そしてそこまで必要としないレベルの企業にはクラウドサービスとしてHPCの能力を提供していくことで、シミュレーション活用による「ものを作らないものづくり」による低コスト化、短TAT化などの支援を行い、現在の2%のシェアを10%まで引き上げたいとしている。

HPCの中でも処理性能や投資金額などに応じてハイエンド、ミドルエンド、ローエンドと分けることができる。今後の市場拡大の鍵を握るのは、クラウドによるユーザー層の拡大と、経済活動の進展による大規模演算能力への要求の増大だという

すでに欧州では英国ウェールズの産業活性化を目指すプロジェクト「High Performance Computing Wales (HPC Wales)」のパートナーとして指名されている。同プロジェクトは欧州市場の軟化が生じても、ほぼ計画通りの投資が進められている英国でも期待されている産業活性プロジェクトであり、富士通でもこうした政府系ビジネスを足がかりに、その地域、国家全体への浸透を狙っていくとしており、日本および欧州を第1ステップ、中東やアジア新興国などを第2ステップ、そして自国企業による競争力拡大などの意味も持たせたExaスケールのスパコン開発計画などを進める米国や中国への進出を最終的な目標と位置づけた取り組みを行っていくとしており、すでに世界展開に向けて欧州にHPCの拠点を設立するための検討を開始したという。

なお、同社ではGPUコンピューティングやIntelのMICアーキテクチャなどについても、「IntelのKnightシリーズは8SIMD、GPGPUは16SIMDだと思っており、単に演算器を増やすほうがコアを増やすよりも確かに増やすトランジスタ数の問題では楽になる。しかし、もう1つの問題として、超並列演算を低消費電力で実現するためにはインタコネクトをCPUに内蔵する必要がある。我々はTofuで、その第一歩を築けた。我々のほか、こうしたアプローチが現在出来ているのはIBMがBlue Geneで実現しているだけであることを考えれば、我々が一番Exaスケールの実現に近いと思っている」と、2018-2020年ころが目標とされているExaスケールを20MW程度で実現するのに、最も近いのは富士通であることを強調した。

会見した富士通のテクニカルコンピューティング・ソリューション事業本部 本部長の山田昌彦氏(左)、同執行役員副社長の佐相秀幸氏(中央)、そして同次世代テクニカルコンピューティング開発本部 本部長の追永勇次氏(右)

FX10のシステムボード。CPUとICCは水冷。メモリは空冷のハイブリッド仕様。水冷式にすることで、動作温度を下げられ、これにより故障率を下げることができるようになる