埼玉県産業技術総合センター(SAITEC)と理化学研究所(理研)は、埼玉県酒造組合との共同研究により吟醸酒用の新しい酵母を開発したことを発表した。

SAITECは、埼玉県独自の清酒酵母を酒造会社に頒布するなど、埼玉県の酒造業界の支援活動を行ってきたが、今回研究チームは、従来使用されてきた埼玉酵母を親株とし、理研仁科加速器研究センターの保有するリングサイクロトロンで発生させた重イオンビームを照射し、変異させた株を用いて、新たな酵母を開発した。

この酵母は、500以上の変異株の中からよく発酵し香りのよいものなどをSAITECが選抜し、さらに小規模の清酒製造試験により性質を確認したものから選抜されたもの。

この新しい酵母を使って組合会員企業による実地規模の製造試験を行ったところ、吟醸酒の香りの主成分であるカプロン酸エチルが多い華やかな香りで酸度の小さい軽快な味の清酒ができたという。

なお、こうして出来た清酒は、丸山酒造より「純米大吟醸酔眺月(すいちょうげつ)」、鈴木酒造より「吟醸本生 大手門(おおてもん)」、小江戸鏡山酒造より「純米吟醸 鏡山(かがみやま)」として販売されるほか、理研でも、これら3酒造会社と協力し、世界で2番目、日本で初めてサイクロトロンを完成させた故仁科芳雄博士にちなんで「仁科誉(にしなほまれ)」という銘柄の初の理研ブランドとなる清酒の販売を行っていくことも予定としているという。