EVレースにも実際に出場し、性能特性を評価

Maxim Integrated Productsのブースでは自社のデバイスなどを活用したOptaMotiveの電気自動車(EV)「E.Rex」の実車や10点タッチに対応したタッチセンサデバイスなどの紹介を行っている。

同EVでは、肝になる12chバッテリモニタIC「MAX11068」を搭載したモジュールを4つ組み合わせることで、96セルの2次電池の電圧と温度、セルバランスなどをモニタリングすることが可能。実際に米国で開催されたEVレースなどにも参加しており、200数十台中16位でゴールしたとのことで、そうした成果を開発にフィードバックしているという。

OptaMotiveの電気自動車(EV)「E.Rex」と搭載されている12chバッテリモニタIC「MAX11068」。右は次世代バッテリモニタIC「MAX17830」を搭載したモジュール

また、すでに次世代バッテリモニタIC「MAX17830」のサンプル出荷も開始している。こちらは従来製品に比べI2Cを2線から4線に、クロックスピードも200kHzから400kHzに強化したほか、外付けスイッチへの対応や自己診断機能の強化が図られており、同社では2011年末までに量産出荷を図りたいとしている。

一方の10点タッチに対応した投影型静電容量式タッチスクリーンコントローラ「MAX11871」は、耐ノイズ性が高く、位置と感度の読み取り速度も10fpsから120fpsと幅広く対応しており、その感度はクラス最高レベルだという。そのため、手袋をした状態でタッチしても反応できるほか、ボールペンなどでのタッチも反応する。

10点タッチに対応した投影型静電容量式タッチスクリーンコントローラ「MAX11871」

また、感度が高いため、直接パネルを触らずに、その上に手をかざす(ホバリング)ジェスチャでもしきい値の設定次第ではタッチされたのと同様に反応することも可能だ。

すでにサンプル出荷は開始しており、パネルベンダから2012年の春ころにパネルとデバイスがセットされたソリューションとして提供される見込みとなっている。

MEMSセンサ活用の新アプリを模索

オムロンブースではエネルギーハーべスト関連技術である「振動発電モジュール」のデモやMEMS絶対圧センサ、MEMSフローセンサなどMEMS技術を応用したセンサのデモを行っている。

振動発電モジュールは、7月に開催された「テクノフロンティア2011」のトピックスの1つとしても取上げているが、周波数は3~100Hzに対応し、振動加速度0.003G以上で発電するというもので、発電能力としては0.1G、30HzでAC100μWとなっている。テクノフロンティア2011ではTPMSをイメージした回転によるデモであったが、今回は鉄道が通過した際に、その振動で発電するというイメージのものとなっている。

オムロンの開発している振動発電モジュールのデモ。今回は電車の通過した際の振動で発電をするというものになっている

一方のMEMSセンサであるが、絶対圧センサは現在、開発を進めているもので、すでに採用を決定したメーカーがあるとのことで、その製品の立ち上げ時期に併せて、2012年の夏には量産を開始する計画としている。ピエゾ素子と周辺機能やセンサデータの処理を行う回路部分などを1チップ化しつつ4mm×4mm×1mmの小型パッケージを実現している。

相対圧力精度は12Pa(約1m)を実現しており、階段の上り下りなども測定可能な歩数計の進化型である活動量計や高度計、腕時計、PNDといったアプリケーションへの適用が想定されている。

オムロンが開発を進めているMEMS絶対圧センサ。MEMS+ICを実現するため、Si-Siの張り合わせウェハを用いて製造する

また、フローセンサはすでに1軸のものは量産中となっており、今回は2軸の気流センサとしてのデモを行っている。2軸にすることで、風向きと風の強さを同時に測定することが可能なのだが、風を感知するセンサであり、センサ部分の汚れが大敵となるため、屋外での使用は難しいという。そのため、屋内での使用が想定される用途となるが、クリーンルームやサーバルームなどは風向きが一定のため、わざわざ2軸にする必要がないことから、同社でも「今回はあくまで参考出展で、来場者などから、こうした使い方をしてみたい、などのアイデアなどを募集できれば」としている。

今回、参考出展という形で展示されている2軸フローセンサ。風向きと風の強さを計測することが可能だが、屋外に弱いという弱点があるため、それを問題としない屋内アプリケーションなどを来場者からヒアリングできれば、とのことで出展となったという

日本のスパコンは世界一

最後に電子部品・デバイス&装置ステージではないが、富士通のブースに日本が誇る次世代スーパーコンピュータ「京」関連のものが出展されていたので、その模様をお伝えしたい。

既報のとおり「京」は2011年6月のTop500で8.162PFlopsの性能を示し1位を獲得し、スパコン世界一位の座を2004年まで1位であった地球シミュレータ以来、久しぶりに日本にもたらした。

2011年6月のTop500とGreen500の賞状も展示

プロセッサにはSPARC 64VIIIfxを採用し、計算ノード間はTofuと呼ぶ専用の高速ネットワークで接続することで、高い信頼性と性能を実現した。今回の展示では、SPARC 64VIIIfxの300mmウェハ、システムボードと昨年のCEATECでも展示していたものに加え、このTofuインタコネクトの概念模型やシステムボードなどをフルに搭載した状態のシステムラックなども展示されている。

「京」のシステムボード

SPARC 64VIIIfxの300mmウェハ

Tofuインタコネクトの概念模型

なお、次回のTop500は2011年11月12日~18日に開催されるSC11にて発表される予定だが、富士通の担当者によると、前回に続き今回は1位を獲得する自信はあるとコメントしていた。

「京」のシステムラック。ちなみに「京」の題字は書道家 武田双雲氏によるもの