凸版印刷と住友大阪セメントは8月29日、コンクリート内の鉄筋に取り付け可能なUHF帯ICタグを共同開発したことを発表した。コンクリート構造物内の鉄筋に取り付けた上でコンクリートの種別や品種などに関する情報を記録させることで、保守メンテナンスに利用できる仕組みだ。建物のそのもののインテリジェント化(ユビキタス化)を実現できるのである。周波数はEPCglobal C1G2規格準拠のUHF帯920~950MHzで、サイズは直径10mm×高さ250mm(取り付け器具部分を除く)。

今後、量産試作品による各種検証、ユーザーによる評価、そしてユビキタスでお馴染みのucodeタグ認定作業を進め、2011年10月より住友大阪セメントがサンプル提供を開始。2012年1月~は、凸版印刷と住友大阪セメントの両社で販売を開始する予定だ。

従来、コンクリート内蔵の実験に採用されてきた13.56MHz帯のICタグでは、コンクリートの材質や厚みの影響を受け、通信距離が5cm以下となってしまっていた。厚みのあるコンクリートでは使用できないため、かぶり厚さ(鉄筋とコンクリート表面間との厚み)が深い大型の建造物への使用ができないという状況だった。さらに、生コンクリートにICタグを添加して流し込んだ場合にはICタグがコンクリートの不特定位置に固定されるため、ICタグを探し出しやすくするために一度に多数のICタグを同時添加する必要があるといった課題があった。

それに対し、今回のICタグは建設現場での利用を考慮し、コンクリートの材質や鉄筋などの影響を受けにくい構造や材質を採用。簡易無線局の申請のみで利用可能な、UHF帯ICタグ向けの中出力ハンディリーダを使用することで、かぶり厚さ15cmのコンクリートの鉄筋にICタグを設置した場合でも、コンクリート表面から通信距離20cm以上を確保。また、実測で最大埋め込み深度は約25cmを確認しており、厚いコンクリートや大型の構造物でも利用できるようになっている。

アンテナは読み取り性能の落ちない設計となっており、材質も品質信頼性の高いもを利用して製造。また、チップ実装方式も採用している。電波の指向性が緩いので、読み取り作業時にはコンクリート内に内蔵されたICタグをピンポイントで探す必要がない点も特徴のひとつ。離れた位置からでも読み取れるので、利便性が高くなっている。

そのほか、簡易取り付けが可能な専用取り付け器具を有していることから、さまざまな太さの鉄筋に対応可能。鉄筋の組み立てに使用する結束線などで簡単に取り付け作業が行えるよう工夫されている。

価格は1万個製造時で1個当たり約1500円を想定。

ICタグ本体は棒状の構造をしており、それに取り付け器具が備えられている。コンクリートを流し込む前に鉄筋に取り付けて置くだけでよく、読み取りやすい高さに取り付けるといったことも容易