松谷化学工業と香川大学、希少糖生産技術研究所の研究グループは、希少糖(レアシュガー)を含有したシロップが自然な甘みを持つ甘味料として有用である研究報告をまとめた。同成果の詳細については9月11日に開催される日本食品科学工業会 第58回大会にて発表される予定。
同研究は、農林水産省食料研究所(現 食品総合研究所)が開発したものの実用化に至らなかった希少糖の製造法を実用化にまでこぎつけたというもの。
ブドウ糖果糖液糖に代表される異性化糖はデンプンを糖化させ、酵素反応と精製、濃縮により作られるブドウ糖と果糖の混合液糖。日本では砂糖の代替甘味料として用いられてきたが、近年、異性化糖の消費増加が肥満の発症に関与している可能性などの科学的知見が報告されていた。
その一方、和三盆の産地である香川では、自然界に大量に存在するブドウ糖や果糖と異なり、微量にしか存在しない単糖である希少糖の研究を進めてきており、特に爽やかな甘味と抗肥満効果を有することが知られる果糖のエピマーであるD-プシコースの研究が盛んである。
今回の研究では、1960年代に検討された糖のアルカリ異性化法のデータを基に検討を進め、当時不純物と考えられていたD-プシコースなどを含む甘味料の製造法に応用したほか、得られたD-プシコース、D-アロースなどの希少糖を含む甘味料の物性などを検討し食品への応用を検討した。
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による分析の結果、こうして得られた糖液(希少糖含有シロップ)の成分は7割程度のぶどう糖と果糖、6%程度のD-プシコース、2割程度のその他成分(D-アロースを含む希少糖、オリゴ糖など)であることが確認された。また、甘味質はコクのある砂糖様で、甘味度は砂糖の9割程度、物性は異性化糖とほぼ同様であり、この結果から、希少糖含有シロップは、異性化糖を含む甘味料の代替が可能な、自然な甘みを持つ優れた甘味料として有用であると考えられると研究グループでは説明している。
なお、松谷化学では、今後も希少糖に関する研究を進め、希少糖の抗肥満、抗糖尿病、抗動脈硬化などをはじめとするさまざまな作用の解明を進めていくとしている。