震災の影響により売上高は大幅減

ルネサス エレクトロニクスは8月2日、2012年3月期第1四半期(2011年4-6月)の決算概要を発表した。売上高は前年同期比29.0%減の2072億3400万円、営業損失は前年同期の3億3900万円から190億9900万円、経常損失は同35億2700万円から202億6900万円、純損失は同330億6600万円から332億1800万円へと、それぞれ赤字幅を拡大させた。

売り上げの減少は、3月に発生した東日本大震災の影響による国内の消費マインドの冷え込みや生産調整による電子機器需要の落ち込み、および生産拠点8拠点の一時的な生産休止などの影響に加え、為替の円高推移などの影響によるとしており、生産拠点の停止により、約300億円の売上減のインパクトが生じたとしている。

2012年3月期第1四半期の業績

四半期ごとの業績推移

半導体事業の売上高は、前年同期比29.6%減の1840億円。主要事業である「マイコン」、「アナログ&パワー半導体(A&P)」、「SoC」およびその他の各売り上げは、マイコンが自動車向けマイコンの売上減が影響し、同22.2%減の772億円となった。

A&Pは、PCおよび液晶テレビ向けドライバICや民生用電子機器向けアナログIC、ディスクリートなどの売り上げが減少し、同23.9%減の629億円。SoCは民生用電子機器や携帯端末向けの売り上げが減少したことが影響し、同46.2%減の418億円となった。また、その他は受託生産やロイヤルティ収入がメインで、同19.4%増の22億円となった。

半導体事業の概況

営業損失の悪化は、売り上げの減少によるものが大きな要因となっているが、経常損益については、支払利息などの営業外費用22億円を計上しており、その結果、営業外損失12億円を計上したという。また、純損失では、特別損失として、那珂工場における操業休止の固定費を中心に災害による損失を119億円計上した結果、332億円の損失となったという。

こうした震災影響などのマイナス要因を受け、同社では2012年3月期通期の業績見通しとして売上高を前年同期比1189億円減の1兆190億円(内、半導体売上高は同1109億円減の9080億円)、営業損益は同425億円減となり前期の145億円の利益から280億円の損失へ、経常損益も同380億円減となり、10億円の利益から370億円の損失へとそれぞれ赤字に転落するものとしている。また、純損益は同750億円改善の400億円の損失と、改善が進むものとしている。

2012年3月期通期業績の予想

なお、同社では下半期については、那珂工場の生産供給体制の回復や上期の生産調整のリカバリ、復興需要などによる需要増が見込まれることから半導体売上高も約5000億円と、前年度下期並みの売り上げまで回復することが見込まれ、下期における営業損益の黒字回復、純損益の黒字達成ができるものとの見方を示している。

震災を経て、成長戦略を見直し

また、同社は同決算発表に合わせて事業方針の説明も行った。同社代表取締役社長の赤尾泰氏は、「今回の震災で顕在化したエネルギー問題や、合併時に策定した100日プロジェクトの問題点の洗い出しを行い、改めてどういった分野に成長戦略をシフトさせるかを検討しなおした」と説明する。

注力するキーワードは「海外市場」「新興国」「スマート社会」の3つで、新興国の経済発展に伴い、半導体は需要が牽引されるが、新興国のエネルギー問題やインフラの整備などのスマート社会が中心になると見るとする。

「海外市場」「新興国」「スマート社会」をキーワードの事業を展開していく

スマート社会の軸は「スマートグリッド」「スマートホーム」「スマートカー」の3つ。中でもスマートグリッドでは、すでに電力計メーター向けマイコンなどを提供しており、そうした背景が強みになるとしており、すでに中国のスマートメータ用マイコンのシェアは7割を超すという。

中でも「スマートグリッド」「スマートホーム」「スマートカー」の3つを軸に据えた事業の展開を図っていく

スマートホームはインバータやLEDなどが中心となるが、インバータ家電向け評価ボードなどの提供も進めており、LEDのアナログドライバおよびマイコンと合わせて、アナログ関連でのシェア拡大を図っていくとする。

スマートカーでは、自動車の用途が多岐に渡るようになり、そうしたさまざまなニーズに対応するアナログ半導体とマイコンを組み合わせて提供していくことで強みを出していくとする。

海外市場としては、中国市場でのシェア拡大が進んでおり、「現地での事業推進がニーズの吸い上げにつながり、現地での開発、製造とうまく回転しており、今後は、そうした成功体験をインドやブラジルにも展開していく」とするほか、マイコンとアナログ半導体の連携を強化させ、拡販戦略を進めていくとしている。

中国ではマーケティングから企画、開発、製造、販売までを一貫して現地で行っており、それが現地での高いシェアに結びついているというのが同社の見方であり、これをほかの成長が見込める新興国にも展開していく方針

同社の3つの事業セグメントである「マイコン」「A&P」「SoC」で見ると、マイコンはグローバルネットワークの活用により、2015年には市場成長率(CAGR7%)を上回る9%成長を実現し、市場シェア35%の獲得を目指すとする。

またA&Pでは、独自技術によるアナログ半導体とアナログASIC/ASSPを組み合わせるほか、クラウド端末向けバッテリ監視ソリューションなどを組み合わせることで、2015年にはパワーデバイスで10%以上のシェアを、アナログICで5%以上のシェアを獲得し、トップクラスのシェアベンダとなることを目標とするとしている。

そしてSoCは、ライフサイクルの短いコンシューマからは基本的に撤退し、クラウド端末などに向けた製品展開を進めるとしており、IP-TV向けSTBやモバイル端末向けチップへの製品展開を強化していくとする。特にNOKIAの半導体部門を買収したルネサス モバイルでは、プラットフォームベンダや携帯機器ベンダ、ネットワーク機器ベンダ、通信事業者などとのパートナーシップを強化していくことで、適用件数の増加を目指すという。

そのため、製品構成の見直しと生産の見直しを進めていく計画で、生産では前工程の海外生産委託の強化と、後工程における基幹工場の強化と海外能力の増強を進めることで、2012年度には営業利益の最終黒字化および中期的な営業利益10%以上、売上総利益約40%を目指すとした。

製品ポートフォリオを見直すことで、生産の有り方も見直す。前工程のファウンドリへの委託の加速と、後工程の海外拠点での生産シフトを加速させることで、生産性の改善によるコストダウンと利益率の向上を狙っていくとしている