TANAKAホールディングスは、ボンディングワイヤ製造を行う田中貴金属グループの田中電子工業が、銅製ボンディングワイヤの生産を日本と中国、シンガポールの3拠点体制にしたことを発表した。

3拠点体制に向けた投資額は約10億円で、同社の中国工場(杭州)で銅製ワイヤの生産を開始するほか、シンガポール工場での生産能力を現在の3倍に増やし、従来からある佐賀県の佐賀工場と合わせた3拠点体制の構築により、2011年度内に全社的な生産能力を現在の2倍となる月間2億mに引き上げる計画。また生産増強に合わせ、現行品よりもランニングコストを低減でき、接着性が向上する銅製ワイヤの新製品「CLR-1A」の生産も開始するという。

田中電子工業が製造する銅製ワイヤの新製品「CLR-1A」

半導体のダイと外部電極をつなぐボンディングワイヤは、金価格の高騰から従来の金から銅へと置き換えが進んでいる。従来、銅製ワイヤは、表面酸化による劣化が早く、品質安定性が低いという欠点があったが、表面処理技術などの加工技術の向上により、最近では耐腐食性や安定性が強化され、その結果、低価格製品の需要が高い中国をはじめとするアジア新興国を中心に、2010年より本格的に需要拡大が加速しており、ボンディングワイヤは現在、世界で月間10~12億m製造されていると考えられるが、銅製ワイヤは全体の15%程度を占め、2013年にはそれが約40%にまで拡大することが見込まれている。

CLR-1Aは、銅表面にパラジウムの被膜を形成し、耐腐食性や接着性を向上させた同社の銅製ワイヤ「CLR-1」の改良版で、現行品より、キャピラリ(ワイヤを通す微細管)の寿命を75%向上させたほか、品質の安定性を左右するセカンドボンディングの接着性も向上させている。

なお、田中電子工業では、CLR-1Aのほか6種類の銅製ワイヤを製造しており、2013年までに銅製ワイヤの販売を月間8億円に引き上げることを目指しており、今回の3拠点体制の構築により、サプライチェーンとして自然災害や社会インフラの傷害などへのリスク分散が可能となることから、さらなる安定的な製品供給を進め、国内外の市場の拡販を行っていくとしている。