ソニー執行役EVP CFOの加藤優氏

ソニーは5月26日、同社の2010年度(2011年3月期)通期業績を発表した。売上高は前年度比0.5%減の7兆1812億7300万円、営業利益は同528.9%増の1998億2100万円、税引き前純利益は同661.8%増の2050億1300万円、純損益は前年度408億200万円の損失から、2595億8500万円の損失へと赤字幅が拡大、と同社が5月23日に発表した業績見通しとほぼ同程度の結果となった。

売上高の減少については、為替の影響が大きく、前年度の平均レートに比べ、米ドルで8.4%、ユーロで16.2%の円高となっており、もし前年度と同様の為替レートを適用した場合、前年度比6%の増収となる。また、営業利益は、為替の影響を受けたもののネットワークプロダクツ&サービス(NPS)分野およびコンスーマプロダクツ&デバイス(CPD)分野などの損益改善によるもので、持分法による投資損益、構造改革費用、および現金支出を伴わない液晶テレビ関連資産の減損による影響を除いた調整後営業利益も前年度比で394億円増となる2528億円となる。

2010年度通期業績の概要

分野別の営業概況は、CPD分野は、市場縮小の影響を受けたストレージメディアや価格競争の影響を受けた光学ディスクドライブの売り上げが減少したことによるコンポーネントビジネスで減収となったものの、アジア・太平洋地域やその他地域、そして日本を中心に液晶テレビの販売台数が増加したことによる売り上げ増、中小型液晶パネルおよびイメージセンサが好調な半導体の売り上げ増により、売上高は前年度比1.6%増の3兆5727億円、営業損失は前年度の532億円の損失から29億円の黒字へと益転を果たした。

各セグメント別の事業概況

NPD分野は、全地域でPCが売上台数を増加したものの、為替の影響を受ける形で、売上高は前年度比0.4%増の1兆5793億円、営業損益は売上原価率の改善およびPLAYSTASION 3におけるハードウェアコストの改善、ソフトウェア売上数量の増加などの要因もあり、前年度の833億円の損失から356億円の黒字へと益転を果たした。

映画分野は、「ベスト・キッド」や「「Grown Ups」、「ソルト」が好調に推移したものの、円高の影響と米国外の劇場興行収入および全世界での映像ソフト収入が前年度に比べ大幅に減少したことにより売上高は前年度比14.9%減の6000億円となった。ただし、米ドルベースでのテレビ番組収入は増加したとしている。また、営業利益は売り上げと同様、円高や減収による影響などを受け、同9.7%減の387億円となった。

音楽分野は、2009年度のマイケル・ジャクソンのアルバム売り上げの好調などがなくなったこともあり、売上高は前年度9.9%減の4707億円となった。ただし営業利益は、売り上げの減収影響があるものの、広告宣伝費および構造改革費用、間接費の減少などにより同6.6%増の389億円の増収となった。

金融分野は、ソニー生命の減収により売上高は前年度比5.3%減の8065億円となった。ソニー生命単体での売上高は前年度比5.9%減の6967億円で、これは保険料収入の保有契約高は堅調であったものの、資産運用収益が減少したことなどによるものとなっている。その結果、営業利益も同26.9%減の1188億円となった。

そしてソニー・エリクソンは、高価格帯のスマートフォンに注力し製品ポートフォリオを集約したことにともなう、販売台数の減少の影響を受け売上高は前年度比6.5%減の60億3400万ユーロとなったものの、純損益は平均販売価格の上昇、製品ミックスの好影響およびコスト構造の改善により前年度の5億2200万ユーロの損失から、7400万ユーロの黒字へと益転を果たし、持分法による投資損益も、前年度の345億円の損失に対し、42億円の利益となった。

同社では2011年度の連結業績見通しを、震災の影響はあるものの、売上高が前年度比4.4%増の7兆5000億円、営業利益を同0.1%増の2000億円、税引き前利益を同12.2%減の1800億円、そして純損益を800億円の黒字としており、この800億円の純利益の内容に関して、同社執行役EVP CFOの加藤優氏は、「CPDでは液晶テレビやイメージセンサの販売増による増収効果、NPSでもゲーム、PC、ネットワークサービスなどの増収効果」の2つが大きな要因となるとするも、ゲーム事業はハードウェアの売り上げ減および不正アクセス問題への対応などで減益を見込んでおり、5月26日時点で想定できている損失額は約140億円としている。

2011年度の業績見通し

また、加藤氏は「2010年度は営業利益がおよそ2000億円と、それなりに成果の上がった年となったと感じている。特に2009年度の営業利益は金融とエンタテインメントが中心だったが、2010年度はエレクトロニクス関連やソニー・エリクソンなどのいわゆる本業で押し上げた数値。円高が逆風となったが、そのような状況で一定の成果を出せたのは良かった」と2010年度を振り返るも、「2011年度に向けて飛躍を見込んでいたが、震災のダメージが大きいこともあり、増収増益と言いつつもほぼ横ばいの状況で、足踏みの状態と思っている」としたほか、同社ネットワークへの不正アクセス問題については、「色々と心配をかけているが、セキュリティの強化を実施し、安全を確保し再開につなげたい。ネットワークビジネスは、この問題があっても、将来の事業の柱の1つであることには変わりはない」とし、セキュリティの強化とともに調査を継続していくほか、カスタマサポートの強化や、ユーザーへのフリーダウンロードサービスなどの提供などを行っていくとした。

2009年度~2010年度の各種製品の売り上げ状況

主用コンシューマエレクトロニクス製品などの2010年度の概況

半導体および液晶パネルの売上高と設備投資額推移。半導体の設備投資はこの数年、抑制傾向が続いていたが、2011年度はイメージセンサの増産に向けた投資を中心に1600億円が予定されている