情報通信研究機構(NICT)は、超広帯域信号(UWB信号)の世界共通ハイバンドを用いたボディエリアネットワーク(BAN)システムの試作に成功したことを発表した。
BANシステムは、各種生体センサ(脈波、SpO2、体温など)を用いることで、生活習慣病予防や高齢者見守りなどに役に立つほか、ゲームコントローラやワイヤレスヘッドホンなど、身の回りで用いる娯楽用小型端末間の音声、画像、データのワイヤレス伝送にも利用できるシステム。
UWB信号と従来の狭帯域信号の比較。UWBは携帯電話で用いるGSMやW-CDMAなどに対して、広い周波数帯域(500MHz以上)を用いることで、送信電力密度を低く抑えた(-41.3dBm/MHz以下)通信方式 |
BANシステムを構築する上で、UWBは、低消費電力で低電力密度特性が好ましいため、BAN物理層技術の1つとしてIEEE802.15.6の中で標準化されており、NICTの技術も多く採用されている。しかし、その使用周波数はローバンドとハイバンドに分けられており、ローバンドは他の無線システムの利用も見込まれ電波法上の制限が多くあるため、世界で共通に利用できる「UWBハイバンド」を用いたBANシステムの開発が求められていた。
今回NICTでは、2009年に試作した日本のUWBハイバンド(7.25-10.25GHz)を用いたBANシステムを進化させ、その3分の1の帯域幅の世界共通UWBハイバンド(7.7376-8.2368GHz)を使用したBANシステムを開発した。
システムの概要は、IEEE802.15.6 準拠のMACを実装し、「サングラス」のフレームに取り付けた小型カメラからの画像、「腕時計」型ユニットで取得した体温・脈波・血中酸素飽和度(SpO2)のデータ、および「杖」に取り付けた超音波センサからの障害物情報を、UWBを用いて「腰ベルト」装着型のハブユニットに送り、交通信号色などの情報を音声で案内する機能を備えているというもの。
世界共通UWBハイバンドを用いたIEEE802.15.6 MAC準拠のBANシステムであるため、同システムは認証を受けさえすれば米国、欧州、日本などで免許不要で利用が可能となる。そのため視覚障がい者の安全補助のみならず、健康見守りなどのヘルスケア分野やゲームコントローラなどの娯楽分野への利用普及が期待されるほか、生体データは従来同様、一般の健康見守りなどにも活用できるとしている。