QDレーザと富士通研究所、東京大学ナノ量子情報エレクトロニクス研究機構は、量子ドットを利用した波長1.3μm帯の半導体レーザで、200℃以上での高温動作に成功したことを発表した。これにより、半導体レーザ適用範囲を拡大することが可能となり、石油やガス資源の探査など高温環境下でのセンシングへの応用が期待されるようになるという。同成果は、5月22日より独ミュンヘンにて開催されている国際会議「CLEO/Europe -EQEC 2011 (The European Conference on Lasers and Electro-Optics and the XIIth European Quantum Electronics Conference」にて発表される。

半導体レーザの利用範囲が光通信や光記録からさまざまな分野へと広がっていくにつれ、高温の環境下での動作が必要となってきている。例えば石油やガスなどの資源探査では、地中深くまでドリルで掘り進み、そこに埋蔵されている物質が石油かどうかをセンシングして見分ける必要があるが、センシングに応用できる波長1.3μm帯の半導体レーザの最高動作温度は最高でも175℃にとどまっていた。

量子ドットを発光部に適用した半導体レーザである量子ドットレーザを用いることで、従来の半導体レーザを凌駕する特性を実現することが可能だが、高温で動作させるためには、できるだけ多くの量子ドットをレーザ動作に寄与させることが必要であり、発光部に用いる量子ドットの密度と均一性を向上させることが課題となってい。

今回、研究グループでは、「量子ドットの密度と均一性の向上」と「量子ドットの多層化積層技術」の2つを開発することで、この課題に対応した。

量子ドットの密度と均一性の向上については、量子ドット結晶の作製技術の改良により、1cm2あたり600億個と高密度での量子ドットのバラつきを小さくして均一性を向上した。

従来の量子ドット(左図)と今回均一性を改良した量子ドット(右図)

一方、多層化積層技術では、高密度で高均一な量子ドットの層を8層まで積層することで、波長1.3μmの半導体レーザの200℃以上の高温動作を可能とした。連続動作状態で最高220℃までのレーザ動作を確認しており、200℃でも2mW以上の光出力が得られているという。

量子ドットレーザの電流と光出力特性

量子ドットレーザの高温動作は、これまで半導体レーザが使えなかった苛酷な温度環境への半導体レーザの適用を可能とするもので、QDレーザでは、今回の成果をもとに高温200℃まで動作可能な半導体レーザの製品化を目指すとしている。