日本で開発された日本向け電球型LEDランプ用ドライバIC

NXP Semiconductorsは、同社照明用ドライバIC「GreenChip」の提供を行っている。中でも2011年2月に発表された非調光対応電球型LEDランプ用ドライバIC「SSL2108x」は、日本におけるニーズを元に、日本で基本仕様が策定された製品で、省電力性のみならず、変換効率や日本のユーザーが求める細かな機能まで対応し、LED電球の活用を促進することが可能な製品となっている。同製品が、従来のLED電球制御用ICと何が異なるのか、同社日本法人NXPセミコンダクターズジャパンのハイパフォーマンス・ミックスソシグナル パワー&ライティングソリューションズ グループマネージャーの丸山浩男氏に話を聞いた。

NXPセミコンダクターズジャパンのハイパフォーマンス・ミックスソシグナル パワー&ライティングソリューションズ グループマネージャーの丸山浩男氏

同社の照明用ドライバICの歴史は古く、前身のRoyal Philips Elec(ならびにPhilips Semiconductors)時代まで遡ることができる。Philips自身も照明ソリューションを手がけており、そうした分野での活用が元となって、現在でもHF-TL、CFL、HID、LEDそしてLEDバックライト向けといった各種製品向けドライバICの提供を行っている。

NXPが提供する照明用ドライバIC各種

今回のSSL2108xシリーズは、最大95%の効率を実現するアプリケーションを簡単に設計することができる定電流出力LEDドライバで、日本などの100/110Vの照明市場向けに、「SSL21081」「SSL21082」の2製品が、100/110Vに加え230Vの照明市場にも対応する「SSL21083」「SSL21084」の2製品、合計4製品がラインアップとして提供されており、「ほぼ日本向けの製品として位置付けられている」とする。また、パッケージは8ピンのSO-8のほか、12ピンのSO-14も用意されており、基板サイズ18mm×22mmで温度保護回路3点を含んでも17点の部品点数で済むリファレンスデザインも提供されており、これをそのまま用いてLED電球を製造することも可能となっている。

SSL2108xシリーズの概要。日本向けに日本で開発されたこともあり、100/110V対応が基本となっている

90%を超す高効率化を実現

同シリーズの特長は、常時臨界モード動作とバレースイッチングによる低損失の実現。臨界モードスイッチングによるピーク電流と実効電流の最適化が可能となっており、FETのON時にピーク電流をソース端子内部のコンパレータで検出することでピーク電圧を常に0.5Vになるように制御し、常に一定のピーク電流で動作することが可能となっている。

SSL20181の臨界モードの概要

また、バレースイッチングの活用によりFETをOFFにし、インダクタ電流が0mAになるまで放電ゼロ電流に伴って発生するリンギング波形の谷を検出してFETを再びONにしている。具体的に言うと、ゼロ電流を検出した後にバレー検出までの間、電流が流れない期間が存在するという。「厳密には不連続モード動作で、ゼロ電流発生後、ドレインにはリンギングが発生するが、より低い電圧でスイッチすることで損失低減している」(同)とのことだそうだ。

また、ゼロ電流の検出とリンギング波形のバレーを検出するための回路をドレイン端子に内蔵しており、「SSL2108xは臨界モード+バレースイッチングを行うすべての部品を内蔵した唯一のLEDドライバであり、dV/dt supply用ダイオードの内蔵により、他社製品で必要とする補助巻き線を不要とすることができる。補助巻き線を用いると、トランスが必要となるため、インダクタのサイズならびにコストアップとなってしまう」(同)ともしており、こうした技術を活用することで、小型ながらLEDドライバとしての効率向上を実現していると説明する。

加えて、PWM調光へ対応しており、ZigBeeなどを用いたワイヤレスリモコンでの調光が可能なほか、日本地域向けとして「FET/スタートアップ電源」も内蔵している。これは、LEDの電源経路から完全独立した電源で、日本の照明器具で用いられている「ホタルスイッチ(照明のスイッチ部分を照らす補助灯)」などを追加部品なしで実現することが可能なものとなっている。

SSL2108xシリーズの各種機能の概要

「これらの製品は、極限までロスを減らすことで、不連続モードで低消費電力化を実現した。バレー検出により、きっちりと電流を電流が落ちきってから立ち上げることが可能となっており、電圧も電流もゼロから立ち上がるため、ゼロスイッチング損失、ゼロノイズとなり、電源ICとしては理想的な動作モードを実現することができる」ということで、リファレンスデザインであっても92.1%の効率を実現しているほか、35V/48V/70V(いずれも100mA時)の入力電圧時のいずれも90%以上の効率を実現しているという。

SSL28081の動作波形と効率測定結果。90%の効率をリファレンスデザインで実現している

照明のちらつき防止で人にも優しく

さらに、日本の厳しい品質要求に応えるために、50Hz/60Hzに同期するリップル電流を最小化しており、これにより回路中のコンデンサ総容量を削減、250V時でも0.22~1.0μF程度で済むとしておりシステムの低コスト化を実現できるほか、大きなリップル電流が乗っていると生じていた、カメラなどで撮影した際の縦縞発生の抑制が可能となる。これは、50Hz/60Hzに同期したちらつきであり、目では確認できないが、脳は判断してしまうため、疲労感などの症状となって出てくるが、これを抑えることで、よりLED照明を健康的に活用することが可能となる。

リファレンスデザインを用いた実基板。今回のデモに使用したものは同社スタッフが手作業ではんだ付けなどを行ったもの

こちらがLED側。配線の先にリファレンスの基板がつながっている

LED電球のようなフードを被せても直視できないほどの明るさを発光させても、基板側はほとんど熱を持っていなかった

GreenChipのロゴマークの活用を提言

同社では、150W級のモジュールであっても効率が高いため、ほとんどの場合で25℃以下を維持できるため、今後は1000lmなどの光量が求められる直管やシーリングなどのLED照明向けのものにも注力していくとするほか、GreenChipという名称をエンドユーザーまで認識してもらうことで、同製品が搭載されている機器は省エネに貢献するものという意識を高めていきたいとしている。

すでに同社ではGreenChipのロゴマークを策定し、協賛してくれる企業などにも使用許諾を出しており、日本の機器メーカーにも活用を呼びかけている。丸山氏は、「電力の逼迫が危惧される現在の日本で、人に優しく、自然にも優しいGreenChipという認識を高めてもらい、活用してもらうことは、電力の使用量を抑制しつつ、明るい環境を実現する1つの解となるはず。消費電力の低さからLED照明に注目が集まっているが、先述したちらつきなどの問題はあまり取り沙汰されない。電球型の下に長時間居るということはあまりないと思うが、蛍光灯の代替として、本格的にLEDへの置き換えが進めば、そうした問題も出てくることが予想され、そうした問題を回避するためにも、同ロゴマークを活用し、優しい照明ということをアピールしてもらえれば」と、GreenChipの製品のみならず、ロゴマークの活用への賛同を募っていくとしている。

GreenChipのロゴマーク。同ロゴは同社のみならず、GreenChipを搭載した機器を販売するベンダなども用いることが可能であり、同社では品質と低消費電力、そして人に優しい製品であるということを示すマークとして活用してもらえれば、と期待を寄せている