富士通研究所(富士通研)は、LTEの基地局がカバーするエリア(セル)の境界付近における電波の干渉を解消する、独自のセル間干渉制御技術を開発したことを発表した。基地局が置かれる地形などにより変わってくるセルの形状や、各基地局が隣接する基地局と重なるセルの境界付近にいる利用者の分布に応じて、電波の干渉を低減する周波数帯域を自動で割り当てることで実現しており、同技術を基地局に搭載することで、電波の干渉による通信速度の低下が問題となる境界エリア付近において、従来と比べて約2倍の速度で通信が可能になるという。
電波の干渉は、図1(a)のように基地局の境界領域で、重なりあう基地局が同じ周波数を使用する場合に問題となる。図1(b)のように隣接するセルごとに異なる周波数を用いる周波数繰り返しを行うことでセル間の干渉を低減できるが、その場合には各セルで使用する周波数帯域幅が狭くなり通信速度が逆に低下してしまう。
そうした課題に対応するべく、基地局に近いエリア(セル中心)と基地局から遠いエリア(セル端)の割り当て周波数を分離し、セル中心では送信電力を小さくしてすべてのセルで同一の周波数を用いる一方で、セル端の帯域については送信電力を大きくして周波数繰り返しを行うFFR(Fractional Frequency Reuse)という方式が提案されている(図1(c))が、こうした干渉制御方式はセルの形状が均等であることを仮定しており、実際には「地形や建物によって電波の伝搬特性が異なる」、「送信電力やアンテナ設置高の異なる基地局が混在する」、「設置場所の制約で基地局間距離が均一でない」といった理由によりセルが均等でなくなり、セル間の干渉が生じる場合がある。
今回、同研究所では、セルの形状や利用者分布の偏りの影響も考慮して、セル間の干渉を抑制するLTE向けのセル間干渉制御技術を開発した。
従来の干渉制御方式では、セルの形状や利用者の分布を考慮せずに規則的にセル端の周波数帯域を割り当てていたため、実際には隣接するセルが同じ周波数帯域であることが起こるが、同技術では、隣接する基地局が互いに状況を確認し、境界エリアの利用者への影響が少なくなるように重なり合うセルの周波数帯域を変更することが可能となっている。
実際に同LTE基地局向けセル間干渉制御技術をシミュレーションによって評価した結果、セルの形状が不均一でユーザ分布に偏りが生じている場合に、干渉制御をまったく何もしない場合と比べて、境界エリアでの利用者の通信速度が約2倍に向上したことが確認されたという。
なお、同社では今後、同技術をLTE基地局に組み込んで運用するための検討を進め、2年から3年後の実用化を目指すとしている。