シャープは4月21日、半導体エネルギー研究所と共同で酸化物半導体(IGZO)を用いた中小型液晶パネルを開発、2011年中に同社亀山第2工場で量産開始を検討していることを発表した。

一般的な液晶はa-Siを用いてTFT(薄膜トランジスタ)を形成していたが、IGZOはa-Siの代わりにIn、Ga、Znを用いたTFTを活用しようというもの。酸化物半導体は、a-Siに比べ、電子移動度が20~50倍高くTFTの小型化による高開口率化ができることから、パネルの低消費電力化や高精細化が可能となる。また、既存の第8世代(G8)のガラス基板を活用することが可能であり、コスト競争力の確保も可能だと同社では説明している。

一般的な液晶モジュールの構造とTFTの構造

実際に10型FWXGAのタブレット向け液晶を製造して試験を行ったところ、従来のa-Si液晶に比べ、消費電力は約1/3低減できており、「高開口率化と高効率化により、少ないバックライトでも従来同様の表示が可能となったことにより、電力の削減ができた」と説明している。

IGZOはa-Siに比べ高移動度であり、TFTの小型化が可能であるほか、その特性を生かした駆動方法を採用することで電力効率を高めることとが可能としている。ただし、その特性に関しては非公開としている

同製品は、市場の拡大が続くスマートフォンやタブレット市場に向けた展開を進めていく計画。これらの市場では、高精細表示かつ高性能な液晶パネルが要求されており、同社でもこれまで液晶の美しさを前面に押し出した端末の提供などを行ってきており、a-Siに比べ移動度が100倍程度高いCGシリコン液晶の提供を行ってきた。このため、今回の製品と、CGシリコン液晶との住み分けについて同社ではCGシリコンについては高精細(300ppi以上)の分野向けに提供を行い、それ以下の分野についてIGZOでカバーしていく方針を示している。

また、G8基板を活用できるため、液晶テレビなどへの展開も期待できるが、「現在はスマートフォンやタブレットの需要が急拡大しており、その分野の需要に対応することが一番。テレビなどの分野については、需要を見ながら判断したい」としており、需要次第では亀山第2工場以外での生産などの可能性もあるとした。

同社の中小型液晶の製造拠点はこれまで、天理と三重の4工場であったが、亀山第2工場がこれに加わることで、中小型液晶のグローバルな需要にフレキシブルに対応することが可能となると同社では説明している