国際レスキューシステム研究機構(IRS)は、2011年4月19日~23日にかけて宮城県と岩手県の沿岸部で水中ロボットによる探索活動を行うことを発表した。
同活動は、南三陸町の佐藤仁町長と岩手県災害対策本部からの探索依頼を受け、宮城県南三陸町と亘理町、岩手県陸前高田市の沿岸部で行方不明者の探索を行い、遺体を発見した場合は位置座標を自衛隊に通報するというもの。
具体的にはテキサスA&M大学のRobin Murphy教授(Center for Robot-Assisted Search and Rescue:CRASARのディレクター)と合同チームを編成するほか、IRSが編成するレスキューチーム「インターナショナル・レスキュー・システム・ユニット(IRS-U)」の真壁賢一隊長(神奈川県在籍消防隊員)も同活動に参加する予定。
IRS-Uは、IRSが2006年3月に発足させた現役の消防・救助・救急隊員が個人の意思で参加し編成されたボランティアによるレスキューチームで、現在12名の現役消防隊員が参加登録している。
活動スケジュールは19日から21日の午前にかけてROBIN氏のチームが南三陸町の沿岸部を調査するほか、19~20日に広瀬茂男(東京工業大学教授でIRS理事)のチームが亘理町の沿岸部調査を実施、22日と23日にRobin氏のチームが陸前高田市の沿岸部調査を実施することが予定されている。
また、探索活動ロボットとして用いられるのは、Robin氏のチームが水中の被害検査、水中の車両やパイプ内の調査が可能な水中探査ロボット「マイクロROV」、広瀬氏のチームが水中探査ロボット「アンカーダイバ3号機AD-3」となっている。
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Robin Murphy氏のチームが用いる水中探査ロボット「マイクロROV」 |
アンカーダイバ3号機AD-3は、東京臨海救助隊が行う水中探査活動を助ける目的で開発したもので、携帯性を重視した質量15kg、高さ600mmのロボット。2次元イメージングソナー(BlueView製:P900-90)を備え、胴体の下部にはハイビジョンカメラも備えており、ソナーをいつも海底に対して30度ぐらいから照射することを可能にするため上下に長い胴体をもった特殊な形をしている。
また船上から上下左右に操縦できるスラスタがついているため、ワイヤを張った状態で上下左右に動くことが可能。最大潜行深さは20mだが、これまで実績は5m程度だという。
同ロボットはボートを止めて周りを探ることを本来の目的として開発されたことから、、ソナーをワイヤの外側に照射する形態をしているが、今回の探査は湾の内部をボートでゆっくり動かして、それにAD-3を牽引させながら海底を探る方式が想定されていることから、照射方向は逆に変更され、AD-3が船に引っ張られて海底近くを動き、前方の海底をソナーとハイビジョンカメラで見て行く形となっている。広瀬氏は、「家の残骸、車、そして遺体が見つかった場合は、そこにブイを置いて目印にし、自衛隊の探索回収を楽にしたいと考えてます」とコメントしている。
また、同ロボットは、ROV(遠隔操縦潜水ロボット)と比較して、ワイヤは常に張った状態になるため、海底の瓦礫に絡まることが少なく、海底近くでソナーを使うため分解能が高く、またソナー画像で対象物を発見したら、近づいて搭載しているハイビジョンカメラでその姿を視覚的に確認することができ、これまで何回かの海岸線での探査実験に成功していることから、「今回の調査に対しても何らかの役に立てるのではないか」とも広瀬氏はコメントしている。