東芝は、同社独自の「Wipe technology storage」の新製品として、機器から取り外し、別の機器に取り付けるとデータが無効化される2.5インチHDD「MK6461GSYG」など5機種を製品化し、6月下旬から量産を開始すると発表した。年内には、このHDDが搭載された機器が登場する見込み。容量としては、640GB、500GB、320GB、250GB、160GBがある。
東芝は昨年の8月、Wipe1と呼ばれるHDDへの電源供給をストップした段階で、HDDのデータを無効化する技術を発表したが、節電モードに移行しただけでもデータが無効化されるため、HDDが機器内にあるときは無効化せず、HDDが持ち出されたときだけ無効化される、より汎用性のある技術の開発が求められていた。
今回発表された技術は、Wipe2と呼ばれるもので、機器本体からHDDに認証コードを送付し、HDDが確認し、認証コードが合えばデータの複号化を行うというもの。もし、他の機器に接続され認証が合わなければ、HDD自体が暗号鍵を消去し、データを無効化する。また、認証コードには、乱数を利用して毎回異なるデータの送受信を行うチャレンジレスポンス方式を採用している。
いずれも、ディスク上に記録された暗号化データを解読するための「暗号鍵」を消去することにより、データを無効化する。現在、多くの暗号化機能を搭載したHDDでは、搭載機器からの指示でのみデータの無効化が可能だが、新製品では搭載機器からの指示がなくても自動的にデータを無効化できるという特徴がある。
利用用途としては、企業向けのPC、デジタル複合機(MFP)、POSシステムなどを想定している。このHDDを搭載することにより、盗難等による情報漏えい防止をはじめ、リース期間終了時や廃棄時におけるHDD内の残存データの無効化作業の迅速化を図る。今後は、SSDへの搭載も行っていくという。
新製品の主な仕様は、平均シーク時間が12msec、インタフェースがSATA、インタフェース速度が3.0Gbps、回転数が7,200rpm、バッファ容量が16MBとなっている。
東芝 執行役常務 ストレージプロダクツ社 HDD事業部 事業部長 錦織弘信氏は、ストレージデバイスの市場環境について、「今後はクラウド化による所有から利用への動きにともなって使用するデータ量は飛躍的に伸びことが予想され、この業界は有望な市場だと思っている。とくにデータセンターがらみと、クラウドからダウンロードしてデータを蓄えておくためのクライアントの外付けドライブが伸び、データセンターは2015年までに平均10%、クライアントは20%の成長が見込まれる」とした。そして、「東芝は、HDDとSSDが共存するなかで両方のテクノロジーを持っており、すべてのHDDを1社で供給できる」と、同社の強みを強調した。
同氏は今後の目標を、現在12~13%のモバイル、エンタープライズ市場でのシェアを、2013年度には20%にし、2015年度には25~26%に持っていきたいと述べた。