NECは2月22日、電子機器の消費電力の測定と、電力管理システムへの情報送信を、外部電源や電池などからの電力供給なしで実現する小型センサを開発したことを発表した。同成果は、2011年2月20日から24日まで米国・サンフランシスコで開催されている半導体回路技術の国際学会「ISSCC 2011(International Solid-State Circuits Conference)」において、22日(米国時間)に発表された。
外部などからの供給なしで電力を得るには、周囲の環境に存在するエネルギーを電気に変換する「エネルギーハーベスト」が有効とされており、電子機器では、電力線の周囲に発生する磁場を電力に変換し動作電源として利用する方法があるが、回収できる電力が1mW程度と限られており、消費電力を計測するセンサの動作は困難であった。
今回、NECが開発したセンサは、独自の回路設計を用いることで、機器の消費電力の計測とデータ送信を、1mW以下の動作電力で実現するもの。
電子機器が消費する電流の波形を、高精度・低電力で常時監視するモニタ回路を開発。電子機器ごとに異なる波形を分析することで、個々の機器の識別、消費電力の測定、稼動状態計測による異常の有無などが検出可能となっている。
また、計測対象の交流電力線を通信路として用い、消費電流波形の情報を管理システムへ送信するデータ送信回路を開発。これにより、電力管理システムなどへデータを送信するための無線通信機器が不要でユーザーの管理が容易になるとともに、センサの小型化も実現した。
さらに、これらのモニタ回路とデータ送信回路を交互に動作させ、センサの消費電力を制御するコントロール回路を開発。同回路は、消費電力が比較的少ないモニタ回路の稼動時に動作を集中させ、消費電力の大きい送信回路の稼動時には停止することで、消費電力を均一化しており、これらの回路により、電流波形の測定からデータ送信までの一連の動作を、1mW以下に抑え、外部の電源供給や電池などを利用することなくセンサ駆動を実現したという。
NECでは、同センサを電子機器に搭載することで、外部電源や電池などを利用することなく、電子機器の消費電力を可視化できるほか、データ送信用の無線装置などが不要なため、小型で管理が容易なセンサを実現できるよしており、今後は同センサ技術を用いて、機器の電力管理システムの開発を進め、実用を目指していくとしている。