大手マイクロプロセッサベンダであるFreescale Semiconductorの日本法人フリースケール・セミコンダクタ・ジャパンは2月15日、記者会見を開催し携帯電話基地局の機能を1チップに集積したプロセッサ「QorIQ Qonverge(コア・アイキュー コンバージ)」を発表した。
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フリースケール・セミコンダクタ・ジャパンでネットワーク事業本部の事業本部長を務める伊南恒志氏 |
始めに、フリースケール・セミコンダクタ・ジャパンでネットワーク事業本部の事業本部長を務める伊南恒志氏が通信・ネットワーク用プロセッサの市場動向と同社の取り組みを説明した。
調査会社Linleyのデータによると、2009年の組み込み用通信プロセッサの市場規模は11億3,000万ドルで、Freescaleはシェアトップで市場の半分近くを占める。またこの市場は2009年~2013年に年平均8%で成長を続けると予測されている。
シェアトップをけん引しているのが、同社の主力製品「QorIQシリーズ」である。PowerアーキテクチャのCPUコアを内蔵するマルチコア・プロセッサで、2008年に最初の製品がリリースされてから、品種数が相次いで拡大されてきた。
また投資銀行MorganStanleyの予測では、インターネット接続されたモバイル端末の数は2020年までに100億台を超えるという。
このような市場環境の中でFreescaleとしては、ネットワーク市場で8つの分野に注力していくとした。その中で4つの分野はすでに高いシェアを獲得しているという。ワイヤレス基地局、ワイヤライン光伝送装置、ルータ、企業向け多機能プリンタ、である。これらに加えて注力するのが、ストレージ機器、各種ゲートウェイ、セキュリティ(ビデオ・ネットワーク)、デジタル・サイネージだと述べていた。
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2009年の組み込み通信用プロセッサの市場シェア。トップがFreescale Semiconductorで半分弱を占め、2位がIntelで約4分の1を占めている |
コンピューティング・デバイスの世代交代によって端末数が10倍ずつ増加してきたことを示すグラフ。2020年までには、インターネット接続されたモバイル端末の数が100億台を超えると予測する |
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フリースケール・セミコンダクタ・ジャパンでプロダクトマーケティング本部ネットワーキング・マルチメディア・グループ製品部長を務める岩瀬肇氏 |
続いてフリースケール・セミコンダクタ・ジャパンでプロダクトマーケティング本部ネットワーキング・マルチメディア・グループ製品部長を務める岩瀬肇氏が、無線通信業界の動向と新製品「QorIQ Qonverge」の概要を説明した。
まず岩瀬氏は、スマートフォンの普及によってパケット通信のトラフィックが爆発的に増加している現状を示した。米国の通信会社AT&Tによれば、過去3年でトラフィックの量は50倍にも増えたとする。さらに、モバイル・データ・トラフィックは年に2倍ずつ増えており、2009年から2014年の5年間でトラフィックの量は39倍になるというCiscoの予測を挙げていた。
こういった「津波」のような膨大なデータをさばくために、無線通信業界は、高速の無線通信規格に早期に対応するとともに、カバーエリアの異なる大小のセルを効果的に配置し、設備投資と運用コストを抑制しなければならない。無線通信ネットワーク(携帯電話システム)の基地局には、小型化と省電力化、コストの低減が求められる。
この要求に応えるべく開発されたのが、「QorIQ Qonverge」である。従来の基地局ハードウェアがFPGA(アクセラレータ)、DSP、マイクロプロセッサで構成されていたのを、「QorIQ Qonverge」では1チップのシリコンダイに集積した。このチップを利用することで、WCDMAとLTEに対応したピコセル基地局に要する消費電力とコストをともに75%ずつ、削減できるという。
「QorIQ Qonverge」の最初の製品は、フェムトセル向けの「PSC9130/31」と、ピコセル向けの「PSC9132」になる。45nmプロセスで製造し、2011年下半期に出荷を始める予定である。また将来は、28nmプロセスへと移行する。メトロセル向けとマクロセル向けのプロセッサは始めから28nmプロセスで製造する。リリースは2011年末、出荷開始は2012年になる。