米国の大手アナログ半導体ベンダAnalog Devices(ADI)の日本法人であるアナログ・デバイセズは2月1日に東京・日比谷のホテルで記者会見を開催し、2010年度(2009年11月~2010年10月期)の業績と2011年度(2010年11月~2011年10月期)の事業戦略を説明した。アナログ・デバイセズの代表取締役社長兼会長を務める馬渡修(まわたり・おさむ)氏が、説明にあたった。

アナログ・デバイセズの代表取締役社長兼会長を務める馬渡修(まわたり・おさむ)氏

馬渡氏はまず、ADIワールドワイドと日本法人アナログ・デバイセズの会社概要を紹介した。ADIは全世界で従業員およそ8,500名を擁するアナログ半導体ベンダーであり、特にアナログ・デジタル変換IC(A/D変換IC)とデジタル・アナログ変換(D/A変換IC)、高性能アンプICを得意とする。設立は1965年1月で、米国マサチューセッツ州のノーウッドに本社を構える。

日本法人のアナログ・デバイセズは1970年12月に設立された。外国系半導体ベンダーとしては、かなり早い時期に日本法人を設立していることが分かる。従業員数は約170名。マーケティング、販売、技術サポートの機能を有する。

Analog Devices(ADI)と日本法人アナログ・デバイセズ(ADKK)の概要

ADI製品がシグナル・チェーンのソリューションを提供

ADIの事業部は大別すると、先端技術と先端製品を開発する「コア製品開発事業部(CPT:Core Products & Technologies Group)」と、応用分野ごとにソリューションを提供する「アプリケーション事業部(SMS:Strategic Market Segments Group)」に分かれている。CPTが開発した技術や製品をSMSが利用し、SMSが吸い上げた顧客の要望や意見などをCPTが開発に活かす、というサイクルを構築してある。

ADIワールドワイドの年間売上高は2010年度(2010年10月期)が27億6,200万ドルで、マイナス成長だった前年度に比べると37%増と大幅に伸びて過去最高額を記録した。応用分野別では自動車が前年比66%増、産業機器が同48%増と大きく成長した。2010年度の応用分野別売上高比率は、産業機器が最も多くて46%を占める。次いで民生機器(コンスーマ)が21%、通信インフラストラクチャ機器が19%と続く。製品別の売上高比率はコンバータIC(A/D変換ICとD/A変換IC)が最も大きく、47%を占める。次いでアンプICが25%と続く。

ADIワールドワイドの年度別売上高推移

ADIワールドワイドの応用分野別売上高比率(2010年度)

ADIワールドワイドの製品分野別売上高比率(2010年度)

それから調査会社のデータを引用し、コンバータICでは世界市場および日本市場で断トツのシェアを獲得していること、アンプICとコンパレータICではトップクラスのシェアを獲得していることを披露した。

コンバータIC市場のベンダ別シェア(2009年)

アンプICおよびコンパレータIC市場のベンダ別シェア(2009年)

ADIの売り上げ高を地域別にみると、米国が19%、米国以外の米州(北米と南米)が6%、欧州が25%、日本が16%、中国が18%、そのほかのアジアが16%となっている。米国以外の地域が81%を占めており、しかも地域による偏りがなく、バランスが非常に良い。

日本法人であるアナログ・デバイセズの2010年度売上高は約4億4,200万ドル。前年に比べると26%増えた。日本法人の売上高を応用分野別にみると民生(コンスーマ)が最も大きく、52%を占める。ワールドワイドの21%に比べると、日本市場は民生の割合が大きい。一方、ワールドワイドで最大分野の産業機器は、日本市場では17%とそれほど多くない。

ADIの地域別売上高比率(2010年度)

日本法人アナログ・デバイセズの売上高と応用分野別の比率(2010年度)

2011年度(2011年10月期)の目標としては、ADIワールドワイドおよびアナログ・デバイセズともに、10%成長を掲げている。またアナログ・デバイセズの中長期目標は売上高1,000億円、ADIワールドワイドに占める売上高比率20%、日本市場における外国系半導体ベンダ上位5社以内だとした。なお、これらの中長期目標は、2009年2月に事業戦略を発表したときと同様である。

アナログ・デバイセズのビジョンと目標

10%成長を実現するための戦略