情報通信研究機構(NICT)はJVC・ケンウッド・ホールディングスと共同で、200型の裸眼立体表示技術を開発したことを明らかにした。米国サンフランシスコで2011年1月23日~27日の間、開催されている学会「IS&T/SPIE Electronic Imaging 2011」にて発表された。

これまで、NICTでは、裸眼立体表示方式の基本原理を検証するために、小型の立体ディスプレイとして70型級のディスプレイの試作を行ってきたが、今後の実用化を目指した臨場感あるシステムを実現するためには、等身大の人物や実寸大の車などの大きな立体物を、多人数で共有できる200型クラスの大画面化を実現する技術が必要となっていた。

しかし、画面サイズを拡大すると、立体像に縞状ノイズが生じたり、立体像がぼやけたり、観察者の動きに対し不自然な見え方の立体像になるなど、観察する上で無視できないほどの画質低下が生じるという課題があった。

NICTの立体表示原理(上から見た図)

今回の共同研究では、このNICTの立体表示方式において、大画面化に伴う立体像の画質低下の原因を数値解析により明らかにし、その結果をもとに画質改善の方法を考案、システム設計と試作を行うことで、同方式の課題を解決し、大画面裸眼立体表示技術を確立した。

画質低下の大きな要因の1つは、視差画像間に生じる縞状ノイズで、研究によりこのノイズの量は、おもに視差画像間の輝度や色の違いに影響されることが明らかになった。結果、解決策として、プロジェクタ内部に輝度分布や色バランスを精度よく調整する機能を実装することで、ノイズの低減を実現することに成功した。

今回開発した200型の裸眼立体ディスプレイの構成図

また、同立体表示方式では、表示スクリーンに特殊な拡散フィルムと集光レンズを用いるが、表示スクリーンの光制御の精度が、立体像の解像度や運動視差のなめらかさに影響することとなる。そのため、最適な光制御のために、拡散フィルムの評価・選定と集光レンズの設計も実施。その結果、50以上の多くの視差画像が高密度に表示できるようになり、なめらかな運動視差をもつハイビジョン画質の大画面立体像表示に成功、同立体表示技術を確立することが可能となった。

コンピュータグラフィックス(花とミツバチ)の表示画像

なおNICTでは今後、有効な視差画像数を約200に増加することで、立体像の観察領域の幅(視域)を拡大し、より多くの人が観賞できるようにすることを目指すとしている。また、現在はコンピュータグラフィクス(CG)のみを表示してるが、人物や風景といった実写映像も撮影し、表示できる技術の開発にも取り組んでいくとしている。

(b)が左側から観察した車のCG。ドアの隙間からわずかに車内が見える。一方の(c)が右側から観察した車のCG。右に回りこむと、左側からの観察に比べ、より広く車内が見える