性能/電力を評価するGreen500
Top500はLINPACK性能だけを評価するが、エネルギー消費が大きな問題になっている今日では、その性能の達成に必要なエネルギーが小さいことが重要ということから、バージニア工科大のWu Feng准教授とKirk Cameron准教授が始めたランキングがGreen500である。 現在のGreen500は、Top500にランキングされたシステムを、LINPACK性能/消費電力の値でランキングし直している。Top500にも消費電力欄があるが、Green500ではシステムには含まれていてもLINPACK値の測定には使用されていないコンポーネントの消費電力は除いてよいというルールであり、Top500の消費電力とは異なる場合には、Green500に別途エントリしてデータを送る必要がある。
また、Green500は小規模なスパコンについても、グリンーン度の情報を提供するという観点から18カ月前のTop500の最下位のシステムの性能を超えるシステムを対象としてLINPACK性能/電力でランキングを行うLittle Green500がある。
2010年11月のGreen500は、次の表のようになっており、1位がBlue Gene/Qのプロトタイプで2位が東工大のTSUBAME2.0となっている。GPUを採用するハイブリッドシステムはTop500で上位を占めMFlops/Wも高いが、BG/Qは、NVIDIAのGPUを多用するTSUBAME2.0の1.76倍のMFlops/Wと圧倒的なエネルギー効率を誇っており、将来的にどちらのスタイルが標準的になっていくかは予断を許さないと思う。
この表の最後の欄のSubmissionはGreen500にデータを送ってエントリしたシステムで、Top500の4位になっている「京」コンピュータシステムは、エントリは無かったが、Top500のLINPACK値と消費電力から計算して入れたというシステムである。
しかし、この表には若干、疑問がある。Top500のリストから電力値の入っているものだけを抜き出してMFlops/Wを計算してソートすると、次の表のようになる。
東工大のTSUBAME2.0はTop500では1398.61kWであるのに対して、Green500ではLINPACK計算に使ってないノードなどの消費電力を除外して良いルールとなっているので、Green500リストでは消費電力が1243.8kWと約1割減少している。このように、Green500でSubmissionとなっているシステムに関してはGreen500ルールでは消費電力が減っている可能性があるので、Top500をMFlops/Wでソートした結果はGreen500とは多少、異なっている可能性はある。
しかし、Top500ソートの表では2位は国立天文台の81ノードのGrape-DRシステムである。性能/Wは1176.4MFlops/Wであり、これがGreen500リストに含まれないのは理解できない。また、関係者の某H教授によると、1474MFlops/Wという値をGreen500にSubmitしたとのことであるが、それも反映されていない。以前にもGRAPE-DRの値がGreen500に載らず、後になって訂正されたことがあるが、どうもGRAPE-DRとGreen500は相性が良くないようである。
このGreen500リストを見ると、2位のTSUBAME2.0と8位のフランクフルト大のシステム以外はTop500では100位以下の小さなシステムであったり、BG/Qや京コンピュータのように本格稼働は2012年という将来のシステムであったりする。GRAPE-DRを含めるとTSUBAMEは2位ではないかもしれないが、それは大した問題ではない。Top10に入る規模の稼働しているスパコンとしては圧倒的にMFlops/Wが高く、実用的にはGreenスパコンのトップと言える。この点はGreen500の主宰者も認めており、Greenest Production Supercomputer in the World(実用に供されている世界一グリーンなスパコン)という賞状が授与されている。
Top500ソートリストでは、3位はNCSAの手作りのXeonとNVIDIAのC2050 GPUのクラスタ、4位は100ノードのGRAPE-DRである。その次のGreen500の4位、Top500ソートの7位には理研の京コンピュータの小規模システムが入っている。京コンピュータは省電力を頑張りBG/Pのエネルギー効率は超えたが、同時代のライバルとなるBG/Qには約2倍の差を付けられている。もちろん、HPCCに見られるようにLINPACKだけで性能を判断するのは拙速であるが、京コンピュータは、このエネルギー効率の違いをカバーするだけの性能差を各種の実アプリケーションで示さなければならないという高いハードルを突き付けられたことになる。