ARMは、同社のDesignstart PortalでCortex-M0のプロセッサIPを公開したことを発表した。これは教育機関やスタートアップ企業、あるいは開発中のテクノロジなどに向けた、Cortex-M0の特別構成のバージョンである。こうした用途に向けて、Cortex-M0のアーキテクチャをオンラインアクセス可能にすることで、教育機関においてARMアーキテクチャに慣れてもらう、あるいは研究開発などで早期にCortex-M0プロセッサのデザインやインプリメントを評価するのが目的とされる。
許可を得た教育機関あるいは企業は、Pre-configuredなCortex-M0のVerilogネットリストを初期費用無しでダウンロードできる。また将来において高ボリュームの量産出荷が始まる際には、フルバージョンのCortex-M0のプロセッサライセンスにアップグレードも可能である。ただし今回提供されるものは、省電力への最適化と機能構成が一部制限されたものとなっている。とはいえ、ソフトウェアはフルバージョンのCortex-M0と完全互換であり、またそのまま量産に移すことが可能なデザインであるとされている。
プロセッサ構成は標準的なCortex-M0と同一なので、様々なサードパーティの製品や開発環境とも互換性がある。これにはRTOSや様々なミドルウェアライブラリ、あるいは例えばKielのMDK-ARM開発ツールなどが含まれる。
また同社は併せて、CMSIS(Cortex Microcontroller Software Interface Standard) Version 2.0の発表も行った。Verison 2.0では同社のCortex-M4プロセッサ向けにベンダ非依存なHAL(Hardware Abstraction Layer)拡張の提供や、CMSIS-DSP Libraryの追加が含まれている。
CMSIS-DSP Libraryにはベクタ演算や行列演算、複素数演算、フィルタ関数、制御関数、PIDコントローラ、フーリエ変換など、DSPを利用する様々なアルゴリズムが搭載されている。ほとんどのアルゴリズムは浮動小数点と固定小数点フォーマットをサポートし、Cortex-M3およびCortex-M4プロセッサに最適化されている。Cortex-M4ではARM DSP SIMD命令とハードウェア処理されるFPU命令が利用可能であり、アルゴリズムはこれらの命令をフルに生かして処理される。CMSIS-DSP LibraryはC言語で記述され、またソースコードも一緒に提供されるので、アプリケーションの要件にあわせて変更も容易である。
なお、CMSIS-DSPライブラリを含むCMSIS Version 2.0は同社Webサイトにてすでに提供が開始されている。