Texas Instruments(TI)は10月19日(米国時間)、ARMコアを活用した2つのプロセッサ製品を発表した。1つ目はARM Cortex-A8を搭載したARMマイクロプロセッサ「Sitara」の次世代品「AM389x」、もう1つはDSPとARMコアの統合(DSP+ARM)プロセッサ「Integra」の次世代品「C6A816x」。
C6A816xは、「C6A8167」および3D表示回路「SGX530」を備えた「C6A8168」の2種類を用意。いずれも同社の浮動/固定小数点DSP「TMS320C674x」と最大1.5GHz駆動のARM Cortex-A8ならびに各種の高速ペリフェラルを1チップに集積した統合プロセッサで、ペリフェラルとしてはPCI Express Gen2やSATA 2.0、GbE、DDR2/3などが装備されており、システム性能の向上をはかりながら、部品点数の削減などが可能で、BOM(原材料)コストを従来ソリューション比で最大50%低減することが可能だ。
これについて、同社Vice President,Digital Signal Processing Systems,Semiconductor GroupのNiels Anderskouv氏は、「DSPだけでも競合各社に比べて2倍程度の動作周波数を実現しており、そこにCortex-A8が加わることとなる。この性能向上により、大幅にBOMコストの低減が可能になる」と、高性能化と低コスト化の両方を実現できることを強調する。
Texas InstrumentsのVice President,Digital Signal Processing Systems,Semiconductor GroupであるNiels Anderskouv氏(撮影場所は東京・新宿の日本テキサス・インスツルメンツのオフィス) |
従来のソリューションとIntegraを活用した場合のBOMコストの差額例。この場合では約半分まで低減することが可能と説明している |
DSP+ARMを活用する意義。一番の利点としては、1チップでDSPを利用してきた人にはARMコアで差別化できるようになり、ARMコアを利用してきた人にはDSPで差別化を図れるようになるという点 |
一方のSitaraの新製品となる"AM389x"も「AM3892」および3Dグラフィックアクセラレータを搭載した「AM3894」の2種類が用意。いずれも最大1.5GHz駆動のCortex-A8を搭載する。また、ディスプレイ・サブシステムをオンチップに統合しており、2つの異なるコンテンツを、2系統の高解像度ディスプレイに同時に表示することが可能。これにより、片方のディスプレイでタッチ・スクリーン・キーボードを表示しつつ、もう一方のディスプレイでマシン性能の出力結果を表示するといった使い方が可能となる。
主にゲートウェイやルータ、サーバといったネットワーク機器や工業機器、HMIやPOSなどを適用領域と想定しており、Linux、Windows、AndroidなどのリッチOSを搭載し、複数のアプリケーションを同時実行するシステムでその性能を発揮するとしている。
また、これら次世代のIntegraとSitaraは、タッチスクリーンを採用して「iPhoneのように利用可能」(同)なハードウェア評価モジュール(EVM)および同社が提供する無償のソフトウェア開発環境「EZ SDK」を共通して利用することが可能となっており、「EZ SDKを活用すれば、10分以内の立ち上げが可能なほか、チェックボックス型の必用な機能選択によりドライバなどを選択できるため、1時間以内のコード記述開始が可能」(同)と、その操作容易性を強調する。
さらに、「10月初旬に発表した2つのツールを活用することで、ARMプログラマでもDSPを簡単に活用することができるようになり、ARMコアにDSPによるアクセラレーションを与えることが可能となる」(同)とのこと。
いずれの次世代デバイスも「40nmプロセスを活用し、同一アーキテクチャを活用したハイパフォーマンス用途向け製品」(同)とするが、「現在、同じアーキテクチャで45nmプロセスによる低消費電力用途向けを第2世代製品として開発している(今回のSitaraとIntegraが第1世代)。周辺ペリフェラルやソフトウェアの互換性も確保していることから、開発期間の大幅な短縮が可能になるだろう」(同)と、将来にわたって、今回の施策が続いていくことを示唆。「次世代DaVinciも同一アーキテクチャにて開発している」(同)とのことで、同社プロセッサ群の開発容易性の幅は今後も広がっていく計画で、StellarisなどもARMコアであることから、統合なども進めていくとしており、「手始めにStellarisのソフトウェアスィート"StellarisWare"と互換性を持たせた"SitaraWare"の提供を予定している」(同)と、今後の展望を語る。
同社では、1コアも使いやすく、そうした1コアで高い動作周波数が要求される分野も多くあることから、当面は1コア製品の強化を図っていくとするが、将来的には「次世代のOMAPではARM Cortex-A15を採用するのが良い例」とのことで、2コアや4コアなどの採用も視野に入れていくとのこと。45nmプロセス品の次のプロセスもすでに決まっているとのことで、「将来的には色々なものを出す予定なので、期待して待っていてもらいたい」(同)と組み込み分野などに注力していくことを強調した。