米Broadcom 代表取締役社長兼CEOのScott McGregor氏

米Broadcomの代表取締役社長兼CEOであるScott McGregor氏は10月7日、CEATEC JAPAN 2010において「全てをつなげる新時代へ」と題する基調講演を行い、技術の変革がもたらす情報通信の未来像を示した。

すべてがつながる環境が、社会を変える

情報通信分野では、データの増大やインターネットの拡大をはじめとする変化がかつてないスピードで進んでいるが、この変化をもたらす技術変革には4つのトレンドがあるという。

Broadcomが示した技術変革のトレンド

まず1つ目のトレンドとして、インターネット接続および相互接続機能を搭載した家電や端末が爆発的に増加していることを指摘。2015年までにブラウザ搭載の携帯電話は38億台に増加し、2014年までに全世界のテレビ出荷台数の半数以上がインターネット接続機能を搭載するとの予測を示した。これで今後数年間で新たに10億人がインターネットの利用を開始することになる。

また、家電および情報通信機器間の相互接続も増加し、DLNA対応機器の世界出荷台数は2009年の2億8100万台から2014年には11億台を突破すると予想されている。家庭内では、EthernetやWi-Fi、Bluetooth、DLNAなどを介し、すべての機器が結びついたデジタルホームが実現することとなる。

2つ目のトレンドとして、ディスプレイの解像度向上とユーザーインタフェースの向上により、インターネット上の高品質コンテンツの市場が拡大していることを指摘。

CEATEC JAPAN 2010でも多くの発表が見られたように3Dテレビの将来性は高い。また、解像力の向上と共に、ディスプレイの薄型化・軽量化が進んでいる。インターネットコンテンツの表示デバイスは、ノートPCからタブレット、さらに小型の端末へと進化していく。そこで重要となるタッチパネル技術により、より直観的な操作が可能になり、タッチパネル式タブレットの販売台数は2010年の1540万台から2014年には1億3600万台に増加するという。

3つ目のトレンドとして、今後のコンテンツ鑑賞の主流は、家庭内や外出先でのストリーミングへ移行することを指摘した。これまでテレビ番組の視聴は放送局が定める時間にしたがっていたが、今後はユーザーが個々に好きな時間に放送コンテンツを視聴できるようになる。ホームネットワーク対応のビデオ機器は2010年の5100万台から2013年には1億7900万台へ増加する。そして、テレビ、ビデオオンデマンド、インターネット、オンラインゲームをはじめとする動画コンテンツが。2013年までに世界のコンシューマーインターネットトラフィックの91%以上を占めると予想されている。その代表例がYouTubeであり、現在、YouTubeでは1日に20億件、1分当たり24時間分の動画がアッロードされている。

そして4つ目のトレンドがクラウドの発展である。アプリケーションやコンテンツのクラウド化により、インターネットサービスのオンデマンド配信が増加する。3つ目のトレンドに伴う動画コンテンツの増加はクラウド化によって実現できる。

これまでは通信デバイスにすべての機能を搭載し、それを内部で演算し、アプリケーションを実行していたが、今後はネットワークにアクセスする手段としてのみそうした機器を使い、さまざまなアプリケーションの実行はすべてクラウド上で行うこととなる。結果として、高性能CPUを通信デバイスに搭載することが不要となる。また、アプリケーションの実行をすべてクラウド上で行うことで、新たなクラウドの使い方として、リアルタイムの交通情報配信や、音声認識によるテキスト情報への変換が可能になるという。

日本においてもクラウド化は進み、日本のクラウドコンピューティング市場は、2020年までに40兆円規模へ拡大する見通し。

日本においても接続のためのソリューションを展開

Broadcomでは、これら4つのトレンドに合うソリューションを提供し、すべてがつながる社会に対応する方針をCEOは示しており、さまざまなメーカーとの連携を密にし、電子機器および情報通信機器の常時接続によりアプリケーションやコンテンツを利用できる環境の実現を目指すとする。

日本での展開としては、まずタブレット端末向けのソリューションを提供する。また、KDDIのセットトップボックスにBroadcomのトランスコーダ技術が導入されている。これにより、HDコンテンツをリアルタイムでDVRへ録画しながら、保存した動画のサイズを縮小し、ストレージ容量の増大が可能となっている。

さらに日本の準天頂衛星システム(QZSS)「みちびき」にBroadcomのGPSチップが採用されている。QZSSは既存のGPSシステムを補完して測位精度を高めるもので、今回採用されたモバイル端末向け1チップGPSシステムソリューション「BCM4751」は、QZSS衛星からの信号およびコードを受信するのに活用される。

なお、Broadcomでは出荷前の製品に関する情報は公にしない方針としているが、上記以外にもさまざまなソリューションの準備を着々と進めていると公言している。