ここ数年、急速に普及が進んでいる仮想化技術。CPUのMany-Core化との相性が抜群で、リソースの活用度合いを劇的に高める効果があることはご存じのとおり。サーバのサポート契約切れなどをきっかけに、導入を検討している企業も少なくないだろう。

しかし、いざ実際に導入しようとなると、そう簡単に事は運ばない。「仮想化」という新たなレイヤーをITシステムに挿入することになるため、これまでとは異なる視点での考慮が求められるのである。必要なステップを飛ばして成り行き任せで導入を進めた結果、コストが嵩んだうえ、かえって管理が大変になったというケースもあるようだ。

そこで、本誌は、仮想化の導入を検討中のシステム管理者を対象とした技術セミナー『ジャーナルITサミット 2010 仮想化 - 仮想化導入の必須知識をまとめて学べる実践講座』を9月1日(水)に開催する。

当日は、ビジネスへの影響や運用フローまでを意識したコンサルティングを行っているアクセンチュア、仮想環境の特性に対応したハードウェアやソフトウェアを提供している日本IBM、仮想化ソフトウェア「Hyper-V」と各種の業務ソフトウェアを提供しているマイクロソフトの3社から有識者を迎えて、仮想化導入のポイントを詳しく解説していく。

「運用管理」、「ハードウェア」、「ソフトウェア」と、仮想化に関わる各分野の技術知識やノウハウをひととおり学べるバランスのとれたセミナーになっている。以下、講演の内容を簡単にご紹介しよう。

仮想化を活かした近未来の運用管理像

アクセンチュア テクノロジーコンサルティング本部 インフラストラクチャコンサルティンググループ マネジャー 中寛之氏

基調講演を担当するのは、アクセンチュア テクノロジーコンサルティング本部 インフラストラクチャコンサルティンググループ マネジャーの中寛之氏だ。

氏はその肩書きのとおり、インフラ面を中心としたアドバイスを行うコンサルタントであり、最近では仮想化ベースのシステム構築/運用ノウハウ蓄積に努めており、国内外の事例について造詣が深い。

その中氏が講演で解説するテーマは「仮想化時代の新しいIT運用管理」。アクセンチュアが提供する仮想化ソリューションからエッセンスを抽出して紹介する予定だ。

アクセンチュアでは「ITILをベースにした仮想化ソリューションを提供しており、成熟度別にどの段階で何を検討してどんなことを決めるべきかが詳細に定めている」(中氏)と言い、セミナーではポイントや考え方をかいつまんで解説していく予定だ。

特に、仮想化をベースとしたITシステムの将来像と、それを活用した近未来のビジネスフローの部分は必聴。システム構築の最終的なゴールをどこに置くべきか検討するうえで大いに参考になるはずだ。

仮想化向けハードウェア選びのポイント

日本IBM システムx事業部 事業開発 部長 東根作成英氏

仮想化導入案件における「最大の難関」と言えるのがハードウェア選びだろう。というのも、1台の物理マシンの上で何十、何百もの仮想マシンを動かすことになる仮想化環境では、求められるサーバやネットワーク機器のハードウェア要件が従来のものと大きく異なるためだ。

それでは、仮想化環境において必要なサービスレベルを維持するためには何を意識しておくべきなのか。その点を解説するのが、日本IBM システムx事業部 事業開発 部長の東根作成英氏である。

x86サーバの特性をよく知る東根作氏が、仮想化向けハードウェアの大きなポイントとして挙げるのがメモリである。

CPUの性能が劇的な向上を続ける昨今、トランザクションの処理能力は10年間で約60倍に達している。一方で、メモリ容量に関しては10年間で32倍程度。CPUに比べて約半分ほどのスピードでしか拡大していない。そのため、「仮想化による集約率をCPUに主体を置いて計算した場合、メモリ容量が不足する傾向にある」(東根作氏)のだ。

こうした問題を解決する技術としてIBMでは、「eX5(エックスファイブ)」を発表している。セミナーでは、eX5に詰め込まれたノウハウを紹介するほか、ネットワークなど、メモリ容量以外の考慮点についても詳しく解説していく予定である。

仮想化導入前に求めらる意外な作業

マイクロソフト サーバープラットフォームビジネス本部 Windows Server製品部 マネージャー 藤本浩司氏

仮想化導入の際の必須検討事項をソフトウェアの面から紐解いていくのが、マイクロソフト サーバープラットフォームビジネス本部 Windows Server製品部 マネージャーの藤本浩司氏である。

藤本氏は「Windows 2000 Server」からWindows Serverの担当を務めているミドルウェアのエキスパート。最近では日本における仮想化の責任者としてエンタープライズユーザーやパートナー企業に対するリレーションも手掛けている。

その藤本氏が、仮想化環境の価値を左右する大きなポイントの1つとして挙げるのが外部クラウド環境との連携である。

プライベートクラウドと呼ばれる、仮想化技術ベースの柔軟なシステム環境を構築した場合、SaaSやPaaS、IaaSなどのいわゆるパブリッククラウドと連携させることで運用の幅を格段に広げることができる。しかし、当然ながら、そのためには運用/管理の面で準備が必要である。そして、数ある作業の中でも藤本氏が特に強調するのがアカウント管理だ。

「外部クラウドサービスを契約する度に、ユーザーに新たなログイン設定を強制したり、管理者側で全ユーザーの権限設定を行ったりするような状況では、とてもじゃないが、外部サービスを利用しようとは考えなくなる。そのあたりを補う技術がすでにあるので、仮想化導入の際には、そういった技術を利用しつつ、現場がスムーズに運用できるように社内環境を事前に整備しておく必要がある」(藤本氏)

果たして、どのような技術が用意されているのか。Hyper-Vのメリットと合わせて解説される予定なので、セミナーで確認してほしい。