「WebsiteSpark」を通じてWindows系システム開発に着手

IT・クリエイト 取締役 専務 富沢賢一氏(写真左)、IT・クリエイト システムエンジニア 安藤大地氏(写真右)

マイクロソフトがWeb開発会社を支援する「WebsiteSpark」が始動して早くも半年が経過した。すでに600社以上のWeb開発会社がこのプログラムに参加して、一定の成果を上げ始めているようだ。今回、お話を伺ったのは、株式会社IT・クリエイト(以下、IT・クリエイト)。神奈川県相模原市に拠点を置く同社は社員数6名。不動産、建築系などの業務アプリケーション開発・Webアプリケーション開発からゲーム開発などの幅広い業務を行っている。「社員6名すべてがエンジニアです。営業担当はおいておらず、エンジニアが直接お客様に出向いて、困っていることを聞いて解決する。いわゆる提案型の企業なのです」と語るのは、同社の取締役 専務 富沢賢一氏(以下、富沢氏)だ。

ゲームプログラマーとして活躍していた富沢氏がWebアプリケーションの開発を手掛けるようになったのは2000年頃。「当時はクライアント様にも潤沢な資金があった関係でMSDNを契約しWindowsシステムも手掛けていました」と富沢氏。しかし、ある時から一旦、Windows系を使ったプログラム開発からはしばらく離れることになる。「ユーザー企業にも、開発する側にも、ある程度の予算がないとMicrosoft製品は手を出しづらいのです。ビジネスで利益が見込めるのなら可能だったのですが、昨今の不況によりご提案はなかなか難しい状況でした」と富沢氏は語る。

IT・クリエイトのWebサイト

ビジネスであるからには利益が必要だ。しかし、薦める立場からも、利用する立場からも、プロジェクトのトータルコストは当然低いほうが魅力的に見える。しかし、両者の立場から、Windows系のシステムを扱うことにより、技術的にもコスト的にも大きなメリットがあるケースもまた存在しているのも事実だ。「ですから、今回のWebsiteSparkのようなプログラムで、中小規模のWeb開発会社を支援していただけるというのは非常にありがたいですね。これまでは、試しに扱ってみるということさえ難しかったのですから」と富沢氏は語る。

インストールマニアックスで始めて知ったWindowsの世界

IT・クリエイトがWebsiteSparkを導入したのは、2009年秋のこと。同社のシステムエンジニア 安藤大地氏(以下、安藤氏)が「INSTALL MANIAX 2009」で好成績を収めたことから話が始まった。「奨励賞をいただき、その場におられたマイクロソフトの方からWebsiteSparkプログラムのお誘いをもらいました」と語る安藤氏。Windows系のサーバに触れるのはこの大会が最初だったという同氏は「Windowsも触ってみれば、意外とイケる」という印象を抱いたのだという。

実際のビジネスの現場では、Webアプリケーションの開発に、オープンソース系のツールが用いられることは多い。しかし、開発元のサポートなどは存在せず、いくつかのシステムを組み合わせて開発しなければならない。そのため顧客へ導入する際には、開発側が全責任を負う必要があるのだ。一方のマイクロソフト製品の場合は、ある程度ツール群がパッケージングされているうえに、サポートも受けられる。「マイクロソフト製品を使った開発では、その辺がオープンソース系と変わってくるところですね。久しぶりに『Visual Studio』に触れましたが、すごく洗練されてましたし、分かりやすいと思いました」と富沢氏は語る。

オフィシャルドキュメントが充実のWindows、エンジニア間の情報が充実のオープンソース

開発時に技術情報を入手するのは、エンジニアにとって日常的な作業だ。ちょっとしたアイデアや情報を見つけると、それを突破口に開発スピードが向上する。オープンソースの世界では技術情報は個人レベルをはじめ、あらゆる地位や学位のエンジニアの間で知識がシェアされている。

「マイクロソフトのサイトにドキュメント類がまとめられているので、そういった技術情報は調べやすいと思います」と富沢氏。しかし、富沢氏は過去にマイクロソフト製品に触れた経緯を持っているので、ある程度の慣れもあるだろう。豊富なユーザー情報からの取捨選択に慣れたエンジニアの中には不自由さを感じる人もいるようだ。「情報は見つけやすいですが、一般のエンジニアたちの情報が極端に少ないですね」と、オープンソース系で長年活躍してきた安藤氏は感想を述べる。

「弊社のようなオープンソース系をメインとした開発スタイルでは、業務の効率化を図るために、フレームワークをあらかじめ組んでいるケースが多いと思います。Windowsで同じことをするためには、そのフレームワークを移植する必要が出てきます。すんなり稼働する部分もありますが、そうでないところもあります。そんなときに先行ユーザーの情報がすぐに出てくると便利なのです」と富沢氏は語る。

もちろん、マイクロソフトにもそうした声は多く届いており、エンジニア同士の知識をシェアする試みもはじめている。例えば、前出の「INSTALL MANIAX 2009」でも、参加者が自分たちのノウハウを公開して技術情報の共有を図る「Windows Maniax」というサイトを作成するなど、適時コンテンツを充実させる取り組みも盛んだ。今後も、こうした環境の整備は続くはずなので、マイクロソフトの取り組みにも期待したいところだ。

Windowsでしかできないことを提案できる強み

Webアプリケーションの開発には様々なスタイルがある。IT・クリエイトのようなユーザー企業の業務に深くかかわり、提案するビジネスにおいては、最終的な成果に対する評価が次のビジネスに発展するか否かを大きく分けることになる。

「基本的にユーザー企業にとっては、Windowsを使ったシステムでも、オープンソースでも、結果がよければ違いはないのです。しかし、わたしたちのようなビジネススタイルでは、両方のメリットを活かしながら提案できるというのは大きなメリットになります」と富沢氏は語る。

実際に、IT・クリエイトの過去の案件でも、動画のストリーミング配信などで、Windowsサーバと接続する必要のあるプロジェクトなどをはじめ、Windowsを使ったシステムのほうが相性のよい案件がいくつも存在していたのだという。コスト的にWebアプリケーション自体はオープンソースで構築し、メディアサーバとしてWindowsに依存するといったシステム構築になってしまう例が多かったのだという。「そういう案件が、Windowsサーバで一元管理できれば、サーバは1台で済むうえに、かなり密接な接続をして使えます。ユーザー企業にとってもメリットが大きいはずです」と富沢氏。同氏は続けて「何よりも満足してもらえるか、使いやすいかといったところがもっとも重要です。そんな中で、Windowsの良さも理解しすることで、これまで以上に提案の幅が広がるところが強みにつながるとうれしいですね」と語る。

WebsiteSparkが目指しているのは、単にマイクロソフトの技術を提供するというところではない。マイクロソフトの技術の利用に積極的に取り組んでいる企業をサポートし、将来的にはビジネスチャンスを広げていくという思いがある。その観点からも、IT・クリエイトがビジネスの幅を広げる手段のひとつとして、Windowsシステムのノウハウを活用しているというのは、まさにこのプログラムのコンセプトに合致しているといえる。

ファーストプロジェクトから二次展開へ

「いくつか案件がある中、つい最近本格的に始動したビジネスがあります。まだサイト構築程度なのですが、次期プロジェクトでは自動見積もりシステムなどが搭載される予定です」と語る安藤氏。IT・クリエイトでは、WebsiteSparkがすでにビジネスに良い効果を上げている。

「いままでLAMP 環境にて構築させていただきました「やさか引越センター」様の案件にて自動見積、ECサイトの「時代家具 のびる」様などがございましたが、この度、「やさか引越しセンター」様のグループ会社の「リサイクルプレコ」様にご提案をさせていただき、この度の案件はWIMPにて運用させていただけることになりました。開発に当たっては、クライアントのリサイクルプレコ様と話し合って、とりあえず簡単なところからはじめさせていただいておりますが、次は本格的なWebアプリケーションを組み込む事になります。先ほどお話したフレームワークの移行も今まさに佳境といったところなのです」とにこやかに語る富沢氏。ひとつのビジネスから、ステップアップしようとしている両氏の表情は明るい。

「リサイクルプレコ」のWebサイト。WebsiteSparkがビジネスに直結した好例

今後に関して「バックオフィスを取り入れていきたいですね。企業のイントラネットのほぼすべてがWindowsなのに、Webシステムはオープンソースというところが多いと思います。そのような企業に対し、Windowsで固められるところはそうして、適材適所でオープンソースも取り入れる。こうした柔軟で強力な連携ができると思います」と富沢氏は語る。安藤氏も「Windowsのバックアップは便利だと思います。復旧も早いので、業務ファイルやWebサーバのファイルも、Windowsサーバにすべて送り、直観的なファイル検索がおこなえるようにする。これは魅力的です」と抱負を語ってくれた。

WebsiteSparkで得たノウハウをビジネスにフィードバックする構想を語る両氏。さらに富沢氏は「オープンソースはある意味アイデアが出切っている感がありますが、Windowsはまだまだたくさんの可能性が残っていると思います。取り組む人が増えるほど、将来的にいろいろなアイデアが出てくるでしょうから、WebsiteSparkのようなプログラムが盛況なのは楽しみですね」と力強く語ってくれた。

「Windowsサーバに触れる機会が無い人は大勢います。私もそのひとりでしたが、オープンソース系のソフトウェアでも、ちょっとしたチューンをすればあっさり動くのが驚きでした。WebsiteSparkを利用してまずは触ってみる。自分で取り組んでみなければ、何もはじまりませんから、その機会を利用しない手はないと思います」と安藤氏も積極的な活用を薦める。

Webアプリケーション開発の需要が伸び、新しいテクノロジーも次々と生まれる昨今のビジネスシーン。Windows系のシステムがその一翼を支えるのは今後も変わりはないだろう。IT・クリエイトの両氏が言うように、「まずはチャレンジしてみる」という姿勢があれば、ビジネスにもきっと新しい世界が開けるはずだ。

マイクロソフトのWebsiteSparkは、多くのWeb開発者にとって「まずはチャレンジしてみる」ひとつのきっかけとしても、大きな力となるのではないだろうか。マイコミジャーナルでは、マイクロソフトのWeb制作会社支援プログラムWebsiteSparkの申し込みを受け付けている。この機会にWebsiteSparkに参加してみてはいかがだろうか?

インタビュー撮影:糠野伸