ソニーは5月26日、高い柔軟性を実現し、細い棒状に巻き取ることが可能な厚さ80μm、精細度121ppiの4.1型有機TFT駆動のフルカラー有機ELディスプレイを開発したことを発表した。

ディスプレイを曲率半径4mmで巻き取りながら写真を表示(動画表示も可能)

同ディスプレイは、独自開発の有機半導体材料「peri-Xanthenoxanthene(PXX)誘導体」を採用することで、駆動力を従来のペンタセン(C22H14)を用いた有機TFT比で8倍に向上させることに成功した。これにより、画素トランジスタのサイズを小さくでき、精細度は121ppi、432×240×RGB画素(FWQVGA)を実現した。

PXX誘導体の構造

また、20μmのフレキシブル基板上に有機TFTと有機ELを集積化する技術、巻き取りに邪魔になっていた従来の固いICチップの代わりにやわらかい有機TFTでゲートドライバ回路を形成する技術のほか、有機TFTと有機ELの集積回路中のすべての絶縁膜をやわらかい有機材料による塗布プロセスで構成する技術の開発。

塗布プロセスによる有機TFTを用いるドライバの形成により固い部分を排除、曲げやすくなった

塗布プロセスは、従来の半導体製造技術による真空チャンバなどを用いずに、低温かつ大気中での製造が可能となるため、高い材料使用効率でデバイスの製造が可能となる。

同社では、これらの技術を組み合わせることで、曲率半径4mmの太さに巻いたり伸ばしたりを繰り返しながらの動画再生が可能な有機ELディスプレイの試作に成功。耐久性も1000回の巻き戻しの繰り返し試験を経ても、表示性能に劣化がないことが確認された。

同社では、有機EL開発として、塗布・印刷プロセスに重点を置き、今後は、さらなる有機半導体の高性能化と信頼性の向上を目指して研究・開発に取り組んでいくとしている。

なお、試作された有機TFTおよび有機ELディスプレイの仕様は以下のとおり。

有機TFT

  • 有機半導体材料:peri-Xanthenoxanthene (PXX)誘導体
  • 正孔移動度:0.4cm2/Vs
  • 電流オンオフ比:106
  • チャネル長:5μm
  • しきい値電圧:-5V

有機TFT駆動有機ELディスプレイ

  • 画面サイズ:対角4.1型ワイド
  • ピクセル数:432×240×RGB画素
  • ピクセルサイズ:210μm×210μm
  • 解像度:121ppi
  • 表示色数:1677万7216色
  • ピーク輝度:>100cd/m2
  • コントラスト比:>1000:1
  • 最小曲率半径:4mm
  • 駆動方式:有機TFTを用いた2T-1C電圧駆動
  • パネルの厚み:80μm