日立製作所は4月5日、マンガン(Mn)系正極材料を用いた産業用リチウムイオン電池の寿命を、従来開発品であるリチウムマンガンスピネル系に比べ約2倍にできる正極材料を開発したことを発表した。

左が今回開発したMn系正極材料、右が今回開発したMn系正極材料を適用し日立と新神戸電機が共同試作したリチウムイオン電池セル

従来のマンガンスピネル系の正極材料は、電池の充電の際にリチウムイオンが正極から放出されるためスピネルマンガン結晶の体積が収縮するほか、電池の放電の際は結晶の体積が膨張する変化が発生していた。結果として、充放電サイクルに伴う体積変化の影響により結晶構造が劣化することが、容量低下の一因となっていたことから、新たに結晶に含まれるマンガン元素の一部を他元素と置換することで、結晶構造を安定化させ、充放電容量の低下を抜本的に改善した。

また、従来のリチウムマンガンスピネル系正極材料では、電解液中の水分によって発生する酸の作用により、マンガンが溶出してしまうことが、容量低下の要因となっていた。今回、マンガン元素の一部を他元素と置き換えたリチウムマンガンスピネル系材料に、さらに同社が開発した耐酸性に優れた層状系複合酸化物を混合させることで、マンガンの溶出を低減、容量の低下を抑制することに成功した。

今回開発した正極材料を用いて電池セルを試作し評価を実施した結果、電池容量の低下を従来の1/2に抑制でき、マンガン系正極材料を用いたリチウムイオン電池の寿命の約2倍である約10年以上の寿命を実現できる見通しが得られたという。

また、主原料であるマンガンは資源量が豊富のため、低コストで安定的に供給することが可能である。このため日立では今後、正極材料や電解液組成の改善などを通じて電池性能の向上を図り、蓄電池応用製品事業を拡大、今回開発したリチウムイオン電池を風力発電などの新エネルギー分野での電力貯蔵用や、温暖化ガスを低減する電動式の建設機械などの産業用の電源としての応用していくことで環境負荷低減に貢献していきたいとしている。