STMicroelectronicsは、ARM Cortex-M3をベースとする同社の32ビットマイコン「STM32」ファミリとして最大1MBのフラッシュメモリを内蔵した製品をラインアップに追加したことを発表した。また、90nmプロセスによる内蔵フラッシュメモリを搭載し、ARM Cortex-M3向けに最適化したアダブティブ・リアルタイム(ART)メモリ・アクセラレータを採用したSTM32マイコン技術も発表された。

1MBの内蔵フラッシュメモリを搭載したSTM32マイコン

MB級のフラッシュメモリの搭載により、システムの開発者は既存製品比で2倍以上のメモリを活用することができるようになるため、拡張性の確保やシステム・性能の向上、GUIの構築などが容易に行えるようになる。

同製品に追加された機能としては、ソフトウェア設計を簡素化して実行速度を向上させる最大96KBの高速揮発性メモリ(RAM)が含まれているほか、6個のタイマが追加され、モータ制御、FA、電力供給などのアプリケーションに向けた柔軟性が向上されている。

さらに、メモリ保護ユニット(MPU)が追加されているため、既存のソフトウェアには影響を与えることなく、新しいアプリケーションの実行中に特定コードやデータの保護が可能であり、既存の医療機器や計測器などのプロジェクト認定ソフトウェア・モジュールを効率よく使用でき、アプリケーション全体を再認定する時間とコストを節約ができるようになる。

1MBの内蔵フラッシュメモリは、2個の512KBバンクから構成されており、このデュアル・バンク・アーキテクチャにより、新しいソフトウェアを2番目のメモリ・バンクにアップロードするため、現場におけるアプリケーションの安全なアップグレードが可能となっている。その後、アップロード・データを1番目のバンクに安全にコピーすることで、アップグレード中の停電などの危険に対する保護を提供するプロセスが適用されるという。

一方の90nmプロセス内蔵フラッシュ採用STM32マイコンは、2009年より主要顧客向けにサンプル出荷が行われているもので、ARTメモリ・アクセラレータにより、Cortex-M3とフラッシュメモリ間の動作速度の差を解消することが可能となり、結果としてCPUが最大120MHzまで待ち状態なしで動作することが可能となることから、システム全体の速度と効率の向上が可能になるという。

また、120MHzでプロセッサの最高性能(150DMIPS)を引き出すため、アクセラレータには命令プリフェッチ・キューやブランチ・キャッシュが搭載されており、最大120MHzまで待ち状態なしでフラッシュメモリからのプログラム実行が可能だ。そのため、他のCortex-M3ベースマイコンと比較し、同性能で周波数を抑え、低消費電力化ができるようになるという。

結果として、CoreMarkテストでは、動作周波数100MHzで、他のCortex-M3ベースマイコン比で8%の高速化が確認されており、120MHzでの動作時はさらにその優位性が向上するとしているほか、動的消費電力が188μA/MHz(98μA/CoreMark)であることも確認したという。

なお、同ARTメモリ・アクセラレータと90nmフラッシュメモリを内蔵したSTM32マイコンの詳細については、2010年中に発表される予定としている。