大幅な業績アップを達成したIntel CEOのPaul Otellini氏だが、今後の見通しについては慎重な姿勢を保っている

米Intelは1月14日(現地時間)、2009年第4四半期決算を発表した。売上は106億ドルで前年同期比28%の上昇、純利益は23億ドルで875%上昇という非常大幅な業績アップとなった。このIntelの業績回復は何を意味するのか、そして落ち込みが目立つPC市場やIT業界全体の今後の回復傾向を示すものなのか、そのあたりを検証してみよう。

以前のレポートにもあるように、PCの主要コンポーネントを提供する部品メーカーであるIntelの業績は景気や需要に非常に左右されやすく、業界の風見鶏的な役割を持っている。同社は2008年第3四半期に過去最高のプロセッサ売上を記録したと発表しているが、そのときの売上が102億ドルで純利益が20億ドル。今回はそれを上回る水準となる。Intelの業績はほぼPC市場の販売傾向に連動しており、調査会社の米IDCが13日に発表したPC販売データによれば、2009年第4四半期の世界のPC販売台数は15.2%で、2桁成長は2008年第3四半期以来の水準だという。もともと好調なアジア以外では日本とEMEA (欧州、中東、アフリカ)地域が微増で、販売台数好調に最も貢献したのが米国市場の24%の伸びとなる。今回の業績急上昇は、こうした2008年第4四半期に特に不調だった地域での急激なリバウンドが原因となっている。

Intelによれば、今回の業績急回復はいくつかの原因が重なったものだという。上記のようにPC市場が回復傾向を示したこと、そして下がり続けていたASP (平均販売価格)が上昇に転じたことを受けている。ノートPC向けではAtomより製品単価の高いCULV系プロセッサの需要が高まったこと、そしてサーバ市場での需要がある程度回復し、Xeonなどの以前まで同社の利益の源泉となっていたプロセッサの販売増がASP全体を押し上げる結果となった。同社PCクライアント部門よりも、サーバ向け製品を扱うデータセンター部門のほうが上昇率が高かったことがそれを物語っている。またIntelではこのほか、グロスマージンが65%という過去最高水準に近い水準に達して利益率が非常に高いこと、ネットブック製品の携帯キャリアを通した販売が全体の25%に達し、新しいチャネルとなりつつあることを報告している。人員削減やコストカットなどを通して企業体力が上がっていること、チャネル開拓で販売機会が増えていることがうかがえる。

では回復は本物なのか。米Intel CEOのPaul Otellini氏は今期の成果を強調する一方で、2010年の見通しは比較的慎重だ。決算発表でのカンファレンスコールで同氏は、同社の業績回復の鍵を握る企業のIT投資について「ゆるやかな回復」と述べるにとどまっている。企業が大きくIT投資を復活させるかについては依然不透明だとし、ASPの大きな回復も見込めないとしている。理由としてはASPを引き上げる企業のIT投資が不透明なこと、そしてPC市場成長の牽引役となっている新興国での需要は単価の低いPCに集中していることを挙げている。

PC需要がある程度回復していることは確かだが、課題としてはこれが今後も持続可能なのか、PC単価の下落はいつまで続くのか、そして本当の回復に必要となる企業のIT投資はいつ本格復活するのかという点がある。日本ではBCNの最新のデータでWindows 7の登場が思ったほどPC販売に貢献していないことが判明し、そして牽引役となっている携帯キャリア経由でのネットブックや低価格PCの販売がいつ一巡するのかという懸念もある。コンシューマ市場の好調もある程度限界があるとみられ、それまでに企業需要が回復するかが大きな鍵となるだろう。このあたりはアナリストや金融関係者らが「景気回復の証拠探し」に躍起になっているきらいもあり、注意深く推移を見守っていきたい。