例えば、まだ一度も会ったことがない米国人にビジネスメールを送りたいとしよう。

myGengo ディレクターのMatthew Romaine氏

当然、英語の文面を考えなければならないわけだが、英語に触れる機会が少ない方にとっては、自分の英作文が正しいのかどうかがわからない。自動翻訳サイトも試してはみるものの、英文和訳の品質からして、出力結果を信頼する気にはならないだろう。

結局、英語のできる同僚や部下、友人に頼み込んで内容をチェックしてもらうことになり、なんだか肩身の狭い思いをすることになる――こんな経験をお持ちの方は少なくないはずだ。

そんな皆さんがずっと待ち望んでいたようなWebサービスがある。それが「myGengo」だ。

本誌は、同Webサイトのディレクターを務めるMatthew Romaine氏に、その特徴や今後の展望について話を聞いたのでご紹介しよう。

myGengoとは

myGengoは、「ちょっとした翻訳を頼みたい!!」というときに重宝する人力の翻訳サービスである。

myGengo 代表取締役 Robert Laing氏

サービスの開始は2008年12月から。Robert Laing氏と天野洸氏の2名により会社が立ち上げられた。その後、2009年6月に会社を設立。現在は、 Romaine氏を加えた3名でサイト管理や運営を行っている。

通常、翻訳会社に頼める最低分量は1000文字。それよりも文字数が少ないTwitterやブログ、メールなどの翻訳は引き受け手がなかなかいない。これでは、せっかくインターネットで世界中がつながっていても、英語が苦手な人はその恩恵に与れない。myGengoは、こうした状況を改善するべく開始されたサービスで、「カジュアル・トランスレーション」というコンセプトを掲げている。

翻訳を担当するのは、プロの翻訳者ではないものの、各国語を使いこなせるバイリンガルの人たちだ。

「彼らは、特別な専門知識が必要で、厳格な言葉選びが求められる文書の翻訳には対応できないかもしれないが、前述のTwitter、ブログ、メールや簡単な文書などに関しては問題なく翻訳できる。その能力を活用すれば、ちょっとした翻訳サービスを安価に提供できるはず」(Romaine氏)

このような発想からビジネスがスタートした。

翻訳者はどこから集める?

さて、そのコンセプトにはうなずけるmyGengoだが、果たして翻訳者はそんなに都合良く集まるものなのだろうか。

Romaine氏によると、「当初、サービスを開始するにあたっては、翻訳者を集める方には相当気を遣った」という。myGengoでは、翻訳者募集の告知を海外のWebサイトなどで実施。各国で活躍するバイリンガルを中心に翻訳者を集めた。その反応は予想以上に大きく、「翻訳業務に興味を持つ人は意外と多いことがわかった」(Romaine氏)という。現在でも「FacebookやミクシーなどのSNSで告知するだけで、そこそこの人数が集まる」(Romaine氏)ようだ。

翻訳者の登録はmyGengoのWebサイト内で行うかたちになっている。いつでもだれでも申請することができるが、「応募者全員が採用されるわけではない」(Romaine氏)。翻訳力を試すテストが実施され、それをパスした者のみがmyGengoの翻訳者として登録される。こうしてサービス品質の確保にも努めている。

翻訳者登録をしようとするとテストサイトに誘導される

晴れてmyGengoから認定された翻訳者は、myGengoに翻訳の依頼がある度に、依頼の内容が記されたメールを受け取ることになる。通知を受けた人は内容を見て受注するか否かを決めるが、受注は早いもの順で行われるため、引き受けるならほかの翻訳者よりも早く受注処理を行わなければならない。このあたりの仕組みがレスポンスの高速化につながっている。

なお、翻訳者は、扱える言語や習熟度によってグループ分けされており、翻訳案件の案内メールは該当者のみに送られるという。登録されている翻訳者数は合計で400人程度。英語→日本語、日本語→英語のほかに、英語→スペイン語、日本語→スペイン語、イタリア語→英語、英語→ロシア語の翻訳者も集められている。