スパコンを自国で開発する必要があるのか?
スパコンは道具であり、必ずしも自国で開発する必要はなく、米国製を買ってくれば良い。その方が費用的にも大幅に安いという指摘がある。これは、現状では正しい指摘であるが、米国は国防総省のHPCSプロジェクトなどで次世代スパコンの開発費が賄われている面があり、開発費を含む次世代スパコンの予算総額と比較することは妥当ではない。
また、振り返ってみると、日本のスパコンが強かった1980年代後半から、米国へのスパコンの輸出に米国政府が干渉したり、1996年にはNECのSX-4スパコンの輸出をSuper301条に基づいてダンピングと認定し454%という高関税を掛けて国内スパコンを保護したりという日米スパコン摩擦が起こった。そして、この1996年以降、日本のスパコンは米国市場に入れていない。一方、米国内では核兵器の維持管理のためのシミュレーションを行うスパコンの開発を強力に推進してきた。安いからという理由で米国製のスパコンを買うことは、まんまと米国の策略に載るものである。
単に、輸入した方が安いというのであれば、スパコンよりもコメなどはその典型であるが、やはり、主食であるコメを全量輸入に頼るのは危険と考える人が多いであろう。同様にハイテクも短期の経済性だけでなく、長期的、かつ、広い視点で必要性を考えることが重要であると思う。
ただし、筆者はスパコンが絶対に国産でなければならないと主張するつもりはない。日本はこれこれの分野に注力して国際競争力を維持発展させ、それで食糧や原油を輸入するための外貨を稼ぐ国になるというしっかりした戦略が検討され、その結果、スパコンの順位が低く重点項目にならなかったというならやむを得ないと思う。しかし、このような戦略もなく、来年すぐに困るわけではないし、票にもならないから、近視眼的に科学技術関係の予算を縮減するというのはマズいのである。
一方、科学技術予算に関しても無駄の削減は必須であるし、国民の理解を得るための活動や情報公開も重要である。特に、仕分けでも指摘されたNECの撤退とそれに伴う計画変更の妥当性が国民に説明されているとは言い難い。これらの点については、文科省や理研の改善を望みたい。