東芝は12月8日、次世代半導体であるスピンMOSトランジスタの基本技術を開発したことを明らかにした。米国で12月7日より開催されている半導体国際学会(International Electron Devices Meeting:IEDM)において発表する。

スピンMOSトランジスタは、電子のスピン(自転)を動作制御に利用した素子で、LSIを高速・低消費電力化できるほか、スピン方向の不揮発性を生かし、ロジックLSIのトランジスタにメモリ機能を持たせることもできるといった特長を持つ。

スピンMOSトランジスタにより、トランジスタそのものに不揮発メモリ機能を搭載することが可能になる

今回の同社の成果は、電極に磁性層を設けた独自の素子構造で読み書きの基本動作の検証に成功したというもの。

スピントランジスタの基本原理

今回開発されたスピンMOSトランジスタの構造

同素子は、一般的なMOSFETにスピン機能を担う磁性層を導入したもので、ゲート電圧によりソース・ドレイン間に電流を流し、その電流がスピン反転を制御して素子の抵抗値を変え、読み書きデータに対応させるもの。磁性層にはMTJ(Magnetic Tunnel Junction)構造を導入し、材料には磁性層がスピン偏極しやすいハーフメタルの一種であるホイスラー合金を採用した。

開発されたスピンMOSトランジスタの書き込み動作

開発されたスピンMOSトランジスタの電極構造

なお、同社では同技術を将来実現の期待される不揮発ロジックLSI技術の一候補と位置づけ、今後設計の改良や特性の向上に向けた開発を進め、2015年以降の実用化を目指すとしている。